キャラクタークリエイトで作成したアバターの著作権等
はじめに
操作するキャラクターの外見を、複数のパーツを組み合わせる等して自分で作成することができるようになっているゲームがあります。
キャラクタークリエイト(キャラクリ)といわれるものですが、このキャラクリによって作成されたアバターの著作権は誰に帰属するのでしょうか。
アバターが著作物となり得るか
そもそも複数のパーツ等を組み合わせて作成されたアバターが著作権の対象となるかが問題となります。
細かい要件等のあてはめは省略しますが、作者の何らかの個性が発揮されていれば創作性としては足りるため、作成されたアバターは「著作物」と考えられます。
アバターの著作者は誰か
キャラクリで作成されたアバターの著作者は、ゲーム等を提供する事業者、組み合わせ等をしたユーザーのどちらでしょうか。
現在のゲーム等でのキャラクリでは、パーツ数や、組み合わせの数も多いことから、キャラクリで作成されたアバターは、ユーザーが創作したものと考えられます。
したがって、アバターの著作者はユーザーといえそうです。
なお、組み合わせ数が少なければ、ユーザーが創作したとは評価できないと思われます。
著作権者は誰か
アバターの著作者がユーザーであるとすると、アバターの著作権者はユーザーといえそうです(著作権法17条)。
しかし、通常は、アバターに関する著作権は、利用規約等によって事業者に帰属するとされているため、事業者が著作権者となります。
したがって、著作者がユーザーであろうと、ユーザーでなかろうと、通常は事業者が著作権者になるものと思われます。
「「ラグナロクオンライン」に関連する全ての表現物(プログラム、ゲーム内容、画像、テキスト、BGM、動画、配信映像、キャラクターなど)(以下、「著作物」)の権利は、当社と開発元である株式会社Gravity(以下、「両社」)または両社に使用を許諾した権利者に帰属します。」
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アバターの二次創作等について
事業者がアバターの著作権者となると、アバターについての二次創作は、事業者の許諾を得なければ、基本的に著作権等(同一性保持権、翻案権等)を侵害するものと考えられます。
しかし、ガイドライン等で広く許諾をしていることも少なくありません。
例えば、ラグナロクオンラインでは、「著作物の利用許諾に記載の条件を満たす範囲において、著作物を利用して自由に創作活動を行ってください。」として、創作活動を広く認めています。
したがって、事業者の著作物利用ガイドライン等を確認すべきです。
ガイドライン等に記載がない場合について
例えば、PSO2では、特に二次創作についてガイドライン等で言及していないようです(前記URL参照)。
このような場合、著作権法上、アバターについての二次創作は可能なのでしょうか。
この点、アバターの著作権が事業者にあることからすると、前記のとおり二次創作は著作権者の権利を害するおそれがあります。
二次創作について、逮捕され罰金刑となったポケモン同人誌事件(18禁)やドラえもん最終話事件等、実際に著作権侵害が問題となったこともあるようです。
しかし、実際には、黙示の許諾等が存在する場合や、著作権者によって黙認されている場合があります。
二次創作がグレーゾーンと言われる所以でもあります。
「問19 そもそも二次創作・パロディを創作・アップロードする行為は違法なのか。
(答)
1.二次創作・パロディについては、引用に関する規定(著作権法第32条)の類推適用 や黙示の許諾などにより、適法となる場合があるとの見解もあります。
2.また、違法となる場合であっても、著作権はあくまで個人の権利であり、権利を行使するか否かは、基本的に著作権者の判断に委ねられるものですので、著作権者が権利行使を行わなければ、創作・アップロードを行った者が法的責任を問われることはありません。実際に二次創作・パロディについては、著作権者によって黙認されている場合も多いと承知しています。」
なお、著作権等侵害罪が一部非親告罪化されましたが、二次創作活動については、非親告罪とはならない(=著作権者が告訴しなければ公訴提起できない)と考えられています。
現実的な対処法
ガイドライン等が存在しない場合、二次創作について法的に問題ないとはいえません。
しかし、ポケモン同人誌事件では、ポケモンの18禁同人誌というポケモンのイメージを損なうような内容であったと思われますし、ドラえもん最終話事件では、広まりすぎたことや二次創作と分かりにくく本物と誤解した人がいたこと等が問題視されたようです。
とすれば、ガイドライン等が存在しないゲームのアバターの二次創作等についても、作品のイメージを損なわないようにしつつ、小規模に二次創作物を使用するのであれば、黙認されることが多そうです。