燗=調理! 熱燗DJつけたろうさんのワークショップについて
先日(12月12日水曜日)行ってきた 熱燗DJつけたろうさん のワークショップについて報告します。
感想を一言でまとめると
燗=調理 という認識を掴むことができました。
参加してよかったです。
私の日本酒好きを知っている知人に 燗について熱い人がいるらしい と教えてもらい申し込みました。それまで私は電子レンジで燗をつけていました。湯煎をする方法が正式であるとは知ってはいたのですが、なんとなく敷居が高そう という理由でやっていませんでした。我流だった燗のつけ方をバージョンアップすることを期待しての参加です。
熱燗DJつけたろうさん
ワークショップ当日は最低気温3度の冬日。まさにお燗日和です。
ワークショップは
1 熱燗DJつけたろうさんのレクチャー
2 5人1組に分かれてのワーク
3 日本酒のマリアージュ(=ぴったりの食べ合わせ)を試す
の3本柱から成っていました。
以下、お燗について私が印象に残ったポイントに焦点を当てて報告して行こうと思います。
1 熱燗DJつけたろうさんのレクチャー
印象に残ったのは、燗=調理 であるという つけたろうさんの主張です。燗をつけることを肉を焼くことに例えていました。
ポイントは
A 酒は一度熱を通すと冷やしても元の状態には戻らない。
B 酒ごとに最適の火入れタイミングがある。
C 燗はそのやり方によって美味い不味いの違いが出る高等技術である
です。
A 一度熱を通すと冷やしても元の状態には戻らない。
肉は加熱すると色も硬さも味も如実に変わるので、焼いた肉を冷やしても元の生肉には戻らないことはすぐにわかります。実は、肉ほどわかりやすくないですが、加熱すると元に戻らないのは、酒も同じだということです。アルコールや香味成分が揮発する、ある種の化学反応が進む、などが理由だと思われます。一度燗にした酒を冷まして飲むことを燗冷ましと言いますね。昔からただの冷や酒と火を通してから冷ました酒の味の違いは知られていたということです。分かっていたつもりが意識していなかった。いい加減に燗を捉えていたなーと反省です。
B 酒ごとに最適の火入れタイミングがある。
例えば、焼き肉なら、タンはさっと表面を焼くだけにして中はレアに、ロースは均一に火入れしてミディアムレアに、ホルモンは余計な油を落としたいのでしっかり焼いてウェルダンに と部位ごとに素材の持ち味を引き出す焼き方は違ってきますよね。それが燗についても言えるということです。 酒は一度熱を通すと元には戻らない ので、温め過ぎたらもう温度を下げても狙った味にはならない(=肉の焦げと同じ)。最適なタイミングで加熱を止めて初めて理想的な燗になるというわけです。しかも、どの温度で一番美味しくなるかはお酒ごとに変わってくる。自分としてはここが一番ツボで、今まで漠然と感じていたことが言語化されたと感じました。(このポイントは、この後のワークを通じてさらに印象づけられます。)
C 燗はそのやり方によって美味い不味いの違いが出る高等技術である
従って、ちゃんとした燗をつけるには、酒の性質を熟知し、かつ狙った加熱をできる技術が必要ということです。結構な高等技術なんですね。酒の性質といっても、年度によって同じ銘柄でも味が違ってくることがありますし、抜栓して空気に触れるとまた味がどんどん変わってくる。大抵、1週間から数ヶ月でピークを迎えることが多い。結局、これから燗にする酒の状態を五感を使ってキャッチしながら探っていくしかない。
と小難しい感じになりましたが、つけたろうさん自身は、各自の好きな温度で燗をつけたらいい。なぜ燗にすると美味しくなるのかもよく分かっていない。と開かれたスタンスでいらっしゃいました。ワークショップ自体も、各自の燗のスタンスを掴んでもらうことを主眼に和気藹々と行われたことを付け加えておきます。
2 5人1組に分かれてのワーク
つけたろうさんのレクチャーの後、いよいよ燗の実践です。5人1組のグループになって、実際に熱燗をつけていきます。
用意されていたものは以下の通り
剣菱 黒松
70~80度に保たれた湯の入った鍋
200ccビーカー
デジタル表示の温度計
徳利
お猪口
まず、冷酒で 剣菱 黒松 を味見。
旨い。甘くてスッキリしています。
つけたろうさん曰く、コンビニでも買えて、品質が高いので選んだ とのこと。
確かに。
自分、正直、剣菱 黒松 を舐めていました。昔に流行った大量生産の普通酒だと思っていました。ふつうに旨いです。すみませんでした。
黒松 剣菱
次に、熱燗つけたろうさんが燗づけを実演。
ビーカーに100ccくらい酒を注いで、ビーカーをお湯につけます。
温度計でかきまぜながら、温度をモニターします。
匂いをこまめに嗅ぎます。
ちょうどいい温度になったら、ビーカーをお湯から出します。
徳利とお猪口をお湯でしゃぶしゃぶと温めます。
ビーカーのお酒を徳利に注いでお猪口で飲みます。
旨い。甘みがふくらんで、全体的に軽くなったイメージ。
このつけたろうさんのお燗を基準にして、各グループ一人ずつお燗をつけていきました。
お燗をつけながら、お燗の味見をしながら感想をどんどん言い合いました。ただし、お燗をつけている人は温度について教えてはならないとのこと。
これは、匂いではなく、温度という数字に意識が行ってしまうことを防ぐためのルールなんだそうです。
ワークをしてみわかったことを以下にまとめます。
・はじめはほとんど匂いがしない。(〜30度くらい)
・しばらく温めているとツンとした匂いがするようになる。(30〜60度くらい)
・更に温め続けていると、ツンとした匂いがなくなって乾いた干し草のような匂いがするようになる。(60〜70度)
・匂いがだんだんと弱くなりついにはほとんど匂いがしなくなる。(70度〜)
・ツンとした匂いがしているうちに温めをやめると、まだ柔らかさや膨らみが足りない感じになる(58度で試飲)。
・ツンとした匂いがなくなって乾いた干し草のような匂いがしてから一拍置いて温めをやめると、つけ太郎さんのつけたようなお燗になる(つけ太郎さんは61度だったそう。私のグループも61度と63度でつけた時が一番美味しく感じられました)。
・干し草のような匂いがしてから大分時間が経ってから温めるのをやめると、薄いというか軽い感じになる(68度で試飲)。
・お燗した酒を冷ましてから飲んでも、冷酒とは違う味がする。
数度の温度の違いで味が変わること、上手くつけた燗は本当に美味しいことを実感しました。
何より、同じグループの人とワイワイ言い合いながらお燗するのがとても楽しかったです。
その後、つけたろうさんとっておきのお酒と湯葉と麹味噌のマリアージュ(=ぴったりの食べ合わせ)を試しました。味が釣り合って、口を洗い流す感じでとても美味しかったです。
今回のお燗に使った温度計、徳利、お猪口は持ち帰りできたので、これから家で色々温度を試しながら燗をして行こうと思います。