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#6 イギリスで生放送中に起きた事件に思う

英国に住む私は、今日一日、心がとても揺さぶられている。

朝から、公共の電波で大の大人の男がふたり、普段なら到底言えないことを言い合ったのだ。いや、むしろ、普段言わない立場の側が「黙って聞いてきたがもう耐えられない」と声を上げたのだ。


そして結論から言うと、そのために、ひとりの挑発的でいつも物議を醸しだすことで有名な朝の「顔」がその番組から去ったのだ。

これは毎朝Piers Morgan (ピアーズモーガン)がメインキャストの Good Morning Britain (グッドモーニングブリテン) という生放送のニュース番組の中での出来事だった。

実は私は英国に住んでからというもの、テレビはほとんど観ていない。だからイギリス王室のことも政治のことも、普段はかなり疎い。
そんな私が朝からテレビに目を奪われたのは、その事態の特別さに、夫が私を呼んだからである。


ジャーナリストとしてのキャリアの長いピアーズは、過去にメーガン妃を個人的に知っていて、彼女から接触を断たれたことを逆恨みし、ことあるごとにヘンリー王子とメーガン妃を公の電波で批判してきたという経緯がある。

日本のマスコミもこぞって報道したように、オプラ・ウィンフリーが行ったヘンリー王子とメーガン妃の独占インタビュー90分が英国で昨夜放映された。これが話題にならないはずがない。

今朝のニューススタジオでの事件。ピアーズが、お天気を知らせるキャスター、ベレスフォードから反撃されたことに腹を立ててスタジオを去るシーン↓
https://www.itv.com/news/2021-03-09/piers-morgan-storms-off-gmb-as-alex-beresford-brands-his-behaviour-diabolical-in-wake-of-meghan-and-harry-interview


よかったらこれ↑も読んでみてください。


発端はこうである。

ピアーズが、前日の放送で「メンタルヘルスというけれど、本当のところはわかったもんじゃない。自分はメーガンのいうことは信じない」と、彼女が自殺願望を持つまでに追い詰められた事実を否定した。

そして今朝は、「ヘンリーはダイアナの死をまだ手放せていない。ウィリアムは同じ経験をしたのに、受け止めてメディアとうまく関係を持てているのに・・・」と暗にヘンリー夫妻のインタビューのことを批判した。

ピアーズはそして挑戦的に、普段は発言者ではないベレスフォードの意見を言うよう振ったのだ。
ここで彼はとても冷静に、かつ想いを込めて彼の「言い分」を語り始めた。

ヘンリー夫妻は「圧倒的な量の否定的報道をされていた」。

「婚約したころから悪い報道があった...すべてのことはそこからずっと続いている」

彼はこれが「メーガンの精神的健康とヘンリー王子にも信じられないほどのダメージを与えたのは明らかだ」と加える。

「ピアーズは”ウィリアムだって同じことを経験した”と言う。けれども、あなたが何を知っているというのだ。同時に悲劇を経験した兄弟がいて、一方はうまくそれを払いのけることができても、もう一方はそれほど強く対処できないかもしれない。この状況ではそれがヘンリーに起こっただけだ」
「彼は、あの壊れやすい年齢で、世界中の人の目の前で、母親の棺の後を歩いたんだ。 それは12歳の少年の残りの人生をかたち作ることになるだろう。だから私たちは皆一歩引く必要があると思う」
「あなたがメーガンが好きじゃないことは理解してる。これまでに何度もそれをこの番組で明確にしてきてる」「「何度も何度も・・・!」
「あなたはメーガンと個人的に繋がりを持つか、または過去に持った、そして彼女があなたを断ち切ったと理解してる」
「彼女が望めばあなたを断ち切る権利がある。だけど彼女はあなたを断ち切ってから、あなたについて何か発言したかい?」
「彼女がそうしたとは思わないが、それでもあなたは彼女を(公の場で)ゴミのように扱ってきた」
モーガンは立ち上がり「OK、これで終わりだ」と言って、ベレスフォードが自分の行動を「あなたの態度は悪魔的にひどい!」と呼んだので、「悪かったな、いや…悪かったよ、ぼくにはもうできない…」と言ってスタジオを去ったのだ。
そして同日の午後、ピアーズが番組から降板するとの発表を聞いた。

お天気キャスターのベレスフォード。こんなことができる人だと知らなかった。こんなことが生放送中に起きるなんて誰が想像しただろう・・・
彼が正義のために立ち上がった姿は、ヒーローに見えた。

ここでわかるのが、彼もまた白人と黒人のmixedなのだ。人種差別を肌感覚で知っている人間が、同様に苦しんだ誰かの気持ちが踏みにじられることに我慢ができなかったのだ。

人種差別は色んなカタチをしている。

英国で有色人種 X 女という立場の私にとって、いろいろに心の動く一日だった。

社会のマイノリティとして生きていない人にはわからないことってあるんだよ


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