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#3-2 小径の呼び名を変えただけで見える景色が変わった②

まずはこの写真を見ていただけましたか?

我が家のすぐそばにある、細い細い抜け道です。

20年ほど前、ここに引っ越してきた時に、以前からここに住む方に、「あの道は、"Rapist Alley"(レイプ犯の路地)と呼ばれてるんだよ」

そう教えられました。

え?っと思ったけど、その時その方は、そんな事件があったとも、いつからそう呼ばれるようになったとも言いませんでした。ただ、そう呼ばれるのだと。


その情報を聞いてしまってから見る写真はどのように見えていますか?


私がここに住んだ20年の間、この抜け道は、恐ろしくて忌まわしい場所でした。

それでも何度かは通っています。なぜかというと、とにかくこの道を抜けたらアッという間に家についてしまう魔法のような小径だからです。

健康のために頑張って車通勤をやめていた頃、片道35分歩いて着く職場は、どうしてだか帰り路には45分はかかるのでした。どんだけカラダが重くなってるかがわかるというもの。

魔法の近道さえ通れば、最後に息果てずとも家に着けるのだから、いやいやながらでもここを選んでしまう・・・

『誰かが隠れてて、ヌッと出てくるんじゃないか』という妄想が止まらない私は、"ドスの効いた声を練習してみる"

そして"能天気な歌を歌いながら歩く"

それだけじゃ足りずに、"男の子みたいにドシドシ歩く"

おまけに、"持ってるかばんを振り回しながら歩く" 

・・・そのようなことをして、ほんとは緊迫した内面を必死でつくろって歩いていました。


今思えば、それに何の意味があったというのでしょう!(笑)


イギリスが日本より早くロックダウンに入ったのは一年前の3月でした。食料の買い出し以外の外出は禁止されて、一日に一度だけエクササイズのために外に出ることが許されました。

その時からです。家族と一緒ならいいか、と歩くこの小径は、私の大切な散歩道になりました。

ネトルやワイルドマスタード、たんぽぽやセレンダイン。春はそんな雑草に旬のエネルギーが宿っていて、工夫すると美味しく食べられます。ビタミンも豊富で、スーパーに並んだ農薬のついた青物よりも元気をくれる気がするのです。

今、耕さず、農薬も使わない自然農法の価値がとっても認められています。自分の歩く、足元の自然の中に大地の栄養と春の日差しを受けた贈り物があったんです。

そして夏には小さなプラムが生って、熟れた実は甘く、熟れる前の実は美味しいカリカリ梅になってくれました。こんなプラムがあったこと、20年の間気づきもしなかったのです。

自分が労せず、耕さずして、自然の恵みをたくさん受けています。


Rapist Alleyなんて呼んで恐れていた自分はなんてバカバカしかったんだろう。


現在ここを、 "陽だまりのこみち"と改名してしまったら、なんだか愛おしい。


小径の入り口部分の階段は中高生たちがたむろする場所。

私は時々大きなゴミ袋を持って彼らの置いていったごみを拾うのです。

今までは、所かまわずゴミを捨てられるのが嫌だった。拾っている時も『親に教えてもらわないのかな』と情けない気持ちになっていた。

そもそも、Rapist Alleyに吹きだまるゴミはおぞましいものでしかなかったのです。


でも "陽だまりのこみち" になったからには『ひだまりに似合わないゴミは拾ってあげなきゃ』と思うのです。


わたしという誰かがこの小径を大事にする気持ち、いつか彼らに伝わって、ゴミを捨てようなんて思わなくなってくれますように・・・

想いはきっと通じるはず・・・



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