#183 私だけかもしれないレア体験 ~地中海の白い町に着いてはみたものの…〜
我が家の旅行は長いこと (だけ?) が取り柄だ。
イギリスの学校は一週間単位の休みがたくさんある。おまけに夏休みは6週間もある。
日本と違い、職員が休み返上で出勤するなんてありえない国だ。我が夫のように (以前は私もだったが) 学校に勤める者にとっては、学校が休みなら仕事もない。年間を通して働く日数の少なさに伴う、給与の低さは致し方ないのだ。
よって、宿泊場所は民泊Airbnb (エアビーアンドビー) 一択。
これまでいろんなところを利用したが、特に好きだった場所はちょっとしたおまけの話もある。
これはそんな話だ。
2017年のこと。その夏は結婚25周年ということもあり、都市観光などせず、夏の地中海にのんびり浸かろうと決めた。
夫と次男と私、3人が降り立ったのはコスタ・デル・ソルの街、マラガ。
空港からさほど遠くない場所で数日過ごした。そのお家のプールで息子とさんざん遊び、久しぶりの水と戯れることにも慣れ、いざ次の目的地に向かった。
白い町フリヒリアナ
Frigilianaと書いてスペイン語でフリヒリアナ。それがこの町の名前。
トップ画像は、みんフォトからNZ在住空飛ぶとーちゃん Ashさんのものをお借りしました。視界に飛び込んでくるのはまさにこの『白』の光景だ。
真夏の日差しと青い空に目の醒めるような白い壁。この町に着いたのは、人々が昼食後のシエスタをしないではいられない炎天の午後。
ようやく降り立ったバス停から、2週間分の全ての荷物を背負い、こんな階段や坂道を登っていくのだ。
あづ~~い~!!
それ以上の言葉が出てこない‥‥
私たちは Airbnb サイトを通して家の持ち主から教えられた住所を目指して重い脚 (足) を引きずった。
その家番号の『8』をひたすら探す‥‥
路地の名前を頼りに、Google Mapsに従って進んでも、あまりに入り組んだ細い路地だらけでなんだか化かされてもいるような気分だ。
やっと見つけたハウスナンバーの先には‥‥
右に行ったり左に入ったりしながら、どうやらそれらしい道に『8』のハウスナンバーを見つける。
番号表札のすぐ下には家主の案内通りの(メーター?)ボックスのようなものがあり、扉を開けると果たして家の鍵はそこにあった。
あまりの暑さに3人でヘトヘトになっていたので、力尽きる感じで、鍵を開けて中に傾れ込む。
ドアの向こうはすぐに居間になっている。イギリスのコテージに似ているんだな。
とてもアットホームで、なんともリラックスした雰囲気。
まるでさっきまで家主が寛いでいたように‥‥
i pad も出しっぱなし。
飲みかけのお茶もある。
なんなら下着のようなものも干してあるではないか‥‥
3人で顔を見合わせて苦笑しただろうか。
やっとたどり着いて、自分達を迎えてくれているこの家に流れる違和感。
案内に沿ってそこに居るにもかかわらず、歓迎されている気がしてこないのはなぜだ?
その正体を判断する力が、暑さと渇きで奪い取られていたとでも言おうか‥‥
「オラ(Hola)~!」と呼んでみる。
応えはない。
もうどうしても拭いきれない違和感が頂点に達する。
なんか写真で見た部屋と違わない⁉️
いや、これじゃないんだよ!!
さっきまで流れていた汗が冷や汗に変わった瞬間だったと思う。
『ぎゃ〜〜〜〜っ!』
心のなかで叫ぶ。ヤバ過ぎだ、完全に家に入り込んでる私たちを家主が見たらどうするの?
『一目散』とはああいうのを言うのだろう。私たちは蜘蛛の子を散らしたようにその家を後にした。
正しいほうのナンバー『8』
這う這うの体で入った別の路地。今度こそホンモノの『8』の表札を見つけた時、全てがAirbnbサイトの写真とマッチしていた。
この家で過ごした一週間は忘れられない思い出となった。
その町には住んでいないらしい家主の、センスの良さが光っている。
家の中は、アンダルシア特有なのか土を固めたようなオリジナル部分を残しつつ、とても居心地のよい空間になっていた。
不思議な造りで、家に入らないとわからない中庭に出ることができたり。
最上階にはゆったりテーブルを置いた場所がある。バルコニーと呼ぶのかベランダと呼ぶのか‥‥
一面が壁の代わりに外の景色なので、こののびのびとしたダイニングで過ごすのが好きだった。
ここでどれだけの時間を過ごしたことだろう。
何本のワインを開け、何度の食事をしたことだろう‥‥
そうそう。
このバルコニーから、お向かいのバルコニーが見えて、そちらも民泊施設になっているらしく、若いお嬢さんたちがトップレスで日光浴していたのも、我が家のボーイズには『うれし特典』だったようだ。
フリヒリアナに滞在したおかげで、ネルハ (Nerja) というお気に入りビーチへバスで直行できた。
今はどうかわからないが、片道一人 €1 (1ユーロ) というのもいい。
毎日ビーチに入り浸ったのは言うまでもない。
そして、真夏には干上がっている川に沿って、かなりの距離を歩くことができるのもアウトドア派の私たちには楽しかった。
崖の斜面を野生のヤギがジャンプする姿を見たり、
野生のイチジク、葡萄、アボカドを口にしたり、
早朝に始めた探索だったが、炎天下では音を上げそうになったりした。
乾いた空腹の体で、ちょっとヒンヤリした土造りの家に帰る。冷たいサングリアを飲んで、食べたいものを作る。
民泊ならではの気楽さだ。
この暗いイギリスの冬に、明るい地中海の夏を想う。
ああ、色のある世界が恋しい‥‥
私たちはあの日、図らずも空き巣に入ってしまったことになる。
白い町でギリセーフで黒にならずにとどまった思い出だ。
今になって写真を見直すと、
番号表札のそばに四角いボックス(のようなもの)がある家のなんと多いことか。
ランダムに開けてみたら、
ボックスのひとつから、カジュアルにその家の鍵が出てくるのだろうか‥‥
怖くてたまらない….
少ない予算で、ホリデーを気ままに快適に、私たちがしていることを記事にしていますので、よろしければ‥‥