#83 大プラム祭りで湧いております
noteを始めたばかりの時にこんな投稿をしたことがある。
その中で、プラムの木について書いた。
夏には小さなプラムが生って、熟れた実は甘く、熟れる前の実は美味しいカリカリ梅になってくれました。こんなプラムがあったこと、20年の間気づきもしなかったのです。 自分が労せず、耕さずして、自然の恵みをたくさん受けています。
陽だまりの小径を歩く。
歩く時には、ふと立ち止まってやっぱり空を見上げることが必要だと思う。
小径を利用する人はそれなりに居るはずなのに、たわわに実ったプラムを摘む人はいないに違いない。きっと誰もプラムが生ってることに気づかないのだ。
立ち止まらないから‥‥
空を見上げないから‥‥
「そろそろかもね~」なんて言いながら、夫と息子と三人で夕飯後にちょこっと出かけて摘んできた。三本の木があったが、なんとそれぞれに違う種類のプラムが生っていたことを去年は気づいていなかった。
カリカリ梅を作りたくて、早く収穫したからかもしれない。
家に帰ってシンクの中でザバザバ洗う。宝石のよう。
目の錯覚ではなく、これらはプラムと言ってもとても小粒なのだ。
小さいものでチェリーくらいの大きさだ。いろんな色があるのは違う木から摘んだから。濃い赤のほうが甘いわけでも、緑が酸っぱいわけでもない。
色によって微妙にフレーバーが違っていて、それぞれに甘くて美味しい。
夫はいち早く、ウォッカに漬け込んでごきげんだ。
私も同時に甘いプラムソースを作った。ジャムをつくるほどの大量の砂糖を使わず、ジャムほど煮込まず、レモンの爽やかさもあるトロッとしたソースができた。トーストやヨーグルトにのせてさっそく使っている。
長男はネットであれこれ検索した後、とっておきの缶入りチポトレ (chipotle) を取り出してきた。チポトレとは熟したハラペーニョを燻製にしたメキシコの伝統的な香辛料である。見た目はサンドライド (sun dried) トマトのオイル漬けのようだが、びっくりするくらい辛い。
長男は「ドラえもんかっ」というくらい荷物から予想外のものを出してくる。 メキシコに住むように旅していた時に知った味だそうで、またしても新しいことを教えてもらった。
そうして息子が玉ねぎ、生姜、にんにく、ローリエ、ナツメグなどを入れて作ったのは、オリジナルプラムベースのチポトレソース。それをふたり掛かりで濾したら、残ったものもピューレとして使えそう。スモーキーでフルーティーなのに辛い、ごきげんなソースとピューレがたくさん出来た。
こんなに美味しいプラムを摘んできて、それをみんなが長く美味しく楽しむために、揃って台所に立っている‥‥ 楽しくて興奮する‥‥
お金もかけずに、私たちはなんて豊かな時を共有しているのだろうと感じた、そんな夜長だった。
今日、ハンバーグを作ってチポトレソースをかけたら、思った通り最高だった。
余談になるが、今日は1リットル瓶のウォッカを全部使って、米麹ともち米でみりんも仕込んだ。半年もすれば、琥珀色に変わるのだ。この贅沢なみりんは飲んでも美味しい‥‥ というか、飲まずにはいられないほど芳醇で美味しいいお屠蘇になってくれる。
みりんを漉して残った粕は、こぼれ梅と呼ばれ、料理やデザートに使えるのだ。
足りないものもいっぱいあるイギリス暮らしだけど、スミノフのウォッカでみりんを作るのも悪くないかもな。
小さなプラムを口いっぱいに頬張りながらそんなことを考えた。