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#241 月がこころを動かすから


夕方の卓球クラブの帰りに月があまりに美しくて足を止める。
ああ早く家に帰って夫に見せようと思った。
と同時にフランスに居る娘を想う。仕事に行けなくなった娘は今日、医師から一ヶ月休職せよとの指示を受け泣いたと話してくれた。
こころが疲弊していてもこの月を見て「きれいだ」と思えたらそれだけでいい。そう思って「月がきれいだよ」とメッセージを送る。
イギリスに居る次男にも「月がきれい」「月を見てキミを想ってるよ」そんなことを伝えた。
七時間の時差のある国に居る長男を想ったけど、起こして同じ月を見ることもできないよ、と一抹の寂しさを味わう。

自分の人生を歩む子どもたちには遠くから幸せを祈ることしかできない。それはちょっと切ないのだけれど、見方を変えれば、広い世界のどこに居てもそこから見上げる空に浮かぶ『月』は同じってことがすごいと思う。いつもそれが嬉しい。

子どもの頃、歩いても歩いても月が自分についてくると思った。実際今でも自分が静止していればそこにあるだけの月が、私が歩いた途端に動いて見えるのは子どもの時と全然変わってないのだ。
そんなことにひとりぶつぶつと思いを巡らせながら家路を急いだ。


二階の出窓から夫と月を見上げる。
「月ってなんでこんなに心を動かすんだろうね」と言ってみる。
そうそう、日本人の奥ゆかしさは『I love you』を『月が綺麗ですね』と言わせるんだよと教えてあげた。
夫のほうは、月の引力が潮汐ちょうせきを起こすのだから月は人間の営みの大きな部分をつかさどってるってことなんじゃないか… そんな感じのことを言う。
ほんとうだ。

月の満ち欠けがあり人の人生があるんだよな

「帰って月を一緒に見よう」と思う相手と生きていることのしあわせにこころが温まった。



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コノエミズ
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