#113 霜月の駐車違反、師走のスピード違反。翻ってAさんのラウンドアバウト
先日運転中に嫌なものがピカッと光っ「た気がしてい」た。
いや、なにかの気のせいだ‥‥と自分に言い聞かせていた。
だって私、言うほどのスピードは絶対出してなかったし‥‥
その翌週のこと。
我が家にスピード違反の手紙が届いた。
なんてこと‥‥先月は駐車違反の手紙だったのに。
2通とも運転者の顔はわからないものの、車体と登録ナンバーが激写されていて撮られた時刻もある。
しかも宛名はナンバーを登録している夫の名で届いているが、
やらかしたのは両方とも私。
凹む‥‥
先の駐車違反に関して言えば、私は異議申し立てをしたくらい、自分が咎められたことに納得ができていない。「後で超過分を払えばよい」と書いてあったから、出る前に払い足したのだ。それがとても分かりにくい案内だったので、支払い額を間違えただけのことだ。
カード引き落としなので、手持ちが足りなかったわけでも額をごまかしたわけでもない。
その申し立てが却下されたので、悔しいけれど支払った。
ここでゴネて拗らせた挙句、罰金の額が上がっていくのは目に見えていたから。
この駐車場のシステムは新しいのか古いのかよくわからない中途半端で悩ましいシステムとしか言いようがない。
毎日毎日、これを間違える人の罰金で、この会社はガッポガッポと、稼いでいるのを想像しただけで胸くそがわるい‥‥
あ、言ってしまった💦
そして今回のスピード違反のチケットときたもんだ。
これはある中高一貫の学校の前を通り過ぎる時のことだった。
「スピードを落とすのが当たり前だし、もっと言えばあそこにスピードカメラがあることを知っているだろう」と夫に言われればぐうの音も出ない。
ああ、もう重なる時は重なるもんだ。
そんな私は、夫と一緒にいる時は全く運転をしない。
私の運転に関して、横でいちいちうるさいからだ。
そして「自分の運転こそが誰よりも安全だ」と思い込んでいる夫に任せておけば安泰だからだ。
今朝の話だ。ふたりとも代わりばんこに風邪を引いていたので、「久しぶりに一緒に出かけよう。無理しないでのんびり歩こうか」ということで家を出た。
隣り町の目的地までの道路の途中、男女のサイクリストが上り坂を一生懸命漕いでいた。
私たちの前のバンが一列で走る2台の自転車をいつまでも抜かない‥‥
全く追い越そうとせずにずっとのんびり後ろをついて行くのだ。
夫は「C'mon! … … … Oh, C'mon!」(ほら、‥‥ほら‥‥)と今にも前のめりになっているのだが、前のバンは一向にのんびりしたものだ。
私はこういう時に、夫をなだめすかす。
「Thar's ok, that's ok… …Fine, we are fine! … Relax!!」とリラックスとは真逆の声で言ってしまうこともある
今にもこのバンを追い越そうとチャンスを狙う夫。道が曲がっていて反対車線の車が見えないから、前の車が自転車を追い越さないでいるのに、夫はそれらをまとめてすっ飛ばしていこうとする。
この時間がどれだけ長く感じられたか‥‥
見通しの良い地点に来て、ようやく前のバンはサイクリストを追い越し、私たちの後ろにもできていた滞りが流れ出した。
夫は間もなくぐおんとスピードを上げそのバンを追い越した。
私「やっぱやるんか‥‥」
夫「あれについて行ったらクリスマスが終わってしまうやろ」
この時バンを運転していた人はどんな人かと想像したら、ある人を思い出した。
かつての職場で一緒に働いたA氏だ。50歳前後の独身男性、お母さまと同居されている。
A氏は「われ先に」という社会とは真逆で、とにかく奥ゆかしい人だ。
女性がハッキリものを言うイギリスで、
そして特別支援学校という女性スタッフがほぼ独占するような職場で、A氏は大きな体を小さくして働いていた。
*
イギリスにはいたる所にラウンドアバウトがある。
信号機がない代わりに、3つ以上の2車線の道路が合わさる場所で、運転者が自分の右側の車を優先させることで自主的に車が流れるシステムである。
ラウンドアバウトで絶えず車が流れている時。それはとても自然な動きをしている。ところが町のなかの小さなものでは、ラウンドアバウトを挟んで運転者がお互いの顔の表情までわかるのだ。車同士ががっつり近いので、だれが先に行くか一斉に躊躇する瞬間がある。動きが止まるからそうなるのか、躊躇が動きを止めるのか「鶏と卵」みたいなものかもしれない。
なにしろ、それぞれの車にとって自分の右側が優先なのだ、「絶対的優先」というものがない限り、皆にとって自分より優先されなければいけない車がいるのだから、一瞬誰も進めなくなる。
こんな時に、「誰かが行かなきゃ流れが止まるだろ。むしろここでまず行くことが親切なんだ」とは我が夫の説。
彼の言いそうなことだ。
さて、私は一度だけ仕事帰り、先述のA氏の車で送ってもらったことがある。助手席に座っていると、A氏が車を運転する時にも性格が滲み出ることを感じた。走りが柔らかなのである。
それはいいとして、ラウンドアバウトでのAさんは
いつまでもいつまでも待ちぼうけを食らっていた。
私が『ウソやろ‥‥』とツッコミたいくらいに‥‥ずっと。
いつも夫の言動にハラハラし、苦言を呈する私が、
『これはないやろ‥‥』と思った、
それがA氏の優柔不‥‥いや、奥ゆかしさだった。
*
夫が追い越したバンの運転手さんは、きっと「どうぞお先に」のタイプなのだろう。物事に時間がかかってもストレスを感じない人なのだろう。
この人やA氏が駐車違反やスピード違反でチケットを切られるなんてちょっと想像ができない。
ニコニコと笑って「お先にどうぞ」。
これが師走にできるようなたおやかさが私も欲しい。
「急がば回れ」というけれど、私にはピンとこない。
回っている間じゅう、ジタバタしてものすごく焦りそうだから‥‥
結局、急ぐのが良くないのだと思うのだ。
いつもギリギリで家を出るのじゃなく、
時間にゆとりを持つのだ、私。
もっと落ち着いた人になりたい。
駐車マシーンの注意書きを読み落とさないくらいに‥‥
A氏ならきっとそんなふうにしていたはずだ。
Aさんとはもう会うこともなくなったけれど、
Aさん、今でもラウンドアバウトで躊躇しまくっているのだろうか…..
そんな心配をちょっとだけしてしまった。