#193 意志を持って生きるということ
私がボランティアとして働くReSTOREというお店は家具を再生させて売る地域のチャリティーだ。
ここに、洋服のお直しをしてくれるボランティアの女性がいる。セリーナ (仮名) は、ズボンの丈直しや、破れの修理をしてくれている。
お客さんがお店に持ち込んで依頼していったアイテムを引き受けて、自宅で修理を済ませてまたお店に持ってきてくれる。
セリーナが先日お店にやって来て、マネージャー達と話し込んでいた内容を後で聞くことになった。
この内容にみんなが考えさせられたという、セリーナの『問題提起』はこういうものだ。
お客さんのひとりが、裁縫が得意な人がいるのなら布を持参するのでカーテンを寸法通りに作ってほしい、と言ってきた。
修理代としていただく寄付 (要した時間一時間につき£15) とは料金制度が違う、コミッション仕事は一時間£25だという説明をマネージャーがしたところ、快諾された。
マネージャーはその依頼をセリーナに打診し、それに対して彼女は自分の考えをこのように述べに来た。
「私はボランティアとして引き受けているので、私の時間は自分の信念に沿って使わせてもらう。修理をすることで捨てずにまだ使ってもらえることに、自分は意味を感じているの。新しいものを作り出すのでなく、地球に優しい活動のほうを選びたい」
これを聞かされた時、セリーナの覚悟を感じた。
信念のある人はカッコいいな、と思った。
私だったらどうだろう‥‥
コミッション仕事を引き受けたほうがチャリティーに入る利益は大きいのだ。
どうせ自分が費やす時間なら、もたらす利益が大きい方が喜ばれる‥‥と目先の得を思ったかもしれない。
そうか、新しいものを作り出すのは、結果ゴミも増やすことにつながるということを忘れてはいけなかった。
私がなぜ古い家具をきれいにしたり、壊れたものを修すのか?
それは、効率重視で作られた今の家具よりも魅力を感じるからだ。
ゴミだと思われたものに命を吹き込む作業がいかに効率が悪くとも、出来上がったものから何かを感じてもらうことができると信じるからだ。
昨日私は、『やりたいことを仕事にする』覚悟を書いたばかりだ。
セリーナのような素晴らしい人たちの側で働けることが嬉しいし、これが感謝でなくてなんだろう‥‥
さて、昨日の投稿の冒頭部分からの今の心の変化について語らせてほしい。
なんとも穏やかではない。
イギリスに憧れる人が読んだら、なんとバチアタリな!と思われることだろう‥‥
そう、ここ3〜4年というもの、私はイギリスはもうたくさんで日本が恋しくてたまらなかった。
コロナ渦の入国制限が緩和され、ビザを取得すれば夫も日本に行けるようになった去年の夏、ふたりで日本で移住体験をした。
日本に住みたい私と、23年ぶりの日本をただ『感じて』いた夫。
日本のよいところは数えきれないほど体験したけれど、まず『快・不快』レベルでの真夏の暑さには閉口した。
わかっていたことでありながら、皮膚を焦がすような太陽の熱に衝撃を受けた。車社会なのにほとんどの駐車場には屋根もひさしも植木もない。炎天下駐車中の車内は、クーラーで室温をキープするためにエンジンがかかったまま‥‥
『冷を取る』ために莫大な消費があること、そんな自然に逆らうことが私たちの望み求めたライフスタイルだとは思えなかった‥‥
日本で住むとしたら‥‥
夏でもクーラーなしでなんとか生きられる、高台の風の通る家。そんなイメージを思いっきり膨らませている。
日本移住の話は進んだわけでも頓挫したわけでもないが、
私は今日もイギリスで淡々と生きている。
毎日がニュートラルに過ぎ、
とりわけ生産性があるとも無駄にしているとも思わない。
今の自分は、日本でなければだめだとも、イギリスが嫌だとも思わないようになった。なぜなら、逃げ出したかったのはイギリスではなく『私自身』からだったのだとわかったからだ。
やっとこの頃イギリスという国に対して感謝したい気持ちでいる。今ごろ〜〜‼️と思うけど…
この国は裕福でない私たちの家族生活をいろんな方面から支えてくれた。
子どもの数だけ国から援助を受けてきたし、三人の子どもたちに十分な教育を受けさせていただいたことには感謝してもしきれない。
木々の緑や、歴史ある街並み、海の景色がずっとそばで見守ってくれてきたことに、ようやっと気づくことができた。
私は今、イギリスの懐に抱かれている。
本当はずっとそうだったことに、
気がつける謙虚さが足りなかったのだと思う。
今こそ、仕方ないからここに居るのではなく、置かれた場所で芽吹いてほんの小さな花が咲かせられるように‥‥と心から願って生きている。
それが意志を持って生きることだと思っている。
お金をたくさん稼いでいなくていい。
社会的に敬われる必要もない。
セリーナのように自分の信念に胸を張っていたい‥‥
今の望みだ。
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