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脳は消えない

体温より少し熱いお湯を張った湯船に足から入る。
湯船に浸かった状態から背中を下げていき、顔を天井に向けて、目と鼻と口とその周辺だけが水面の上に出ている状態で目を瞑る。

何も考えずにボーッとしていると、身体とお湯の境界がわからなくなってくる。
次第に身体が溶けてお湯と同化している。
目もない。鼻もない。口もない。
脳だけがある。

脳だけは溶けずに残っている。
ただ考えることはできない。
脳があることだけは感覚としてわかっている。

目を開ける。溶けていた身体が元に戻っている。
手が動く。足も動く。

湯船から出て布団に寝転ぶ。
天井にはいつものライトが見える。
目を瞑る。
徐々に意識が薄れていく。
また、脳だけになる。


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