みずか

創作大賞用にアカウントをつくりました。

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最近の記事

「ミッション乱高下!」第7話

 明日から夏休み。生徒が浮足立っている。  銃は丁重にハルカに返却した。くれぐれも人前で出さないように、と念押ししておいた。  ハルカは、良子と少し話すようになった。    教室に入った良子が、笑顔でハルカに声をかける。 「おはよう!」 「……お、おはよう」 「お、ちょっと声大きくなった?」 「そ、そう?」 「うん、いい感じ」  ショートホームルーム前の教室。英莉はつい、この二人が話していると見てしまう。ハルカが上手く教室で過ごせているかが気になるのだ。後でハルカから、「じろ

    • 「ミッション乱高下!」第6話

      「は?????」 「ん?」 「え??」 「どうしたの?」 「どうしたのじゃなくて」  英莉は、ハルカの両肩を掴んだ。地面にめり込むほど強く、肩に両手を押し付けた。 「怪物、倒せるんだ?」 「うん」 「何なの??」 「えっとー……これはー……」  ハルカが英莉から、後ろめたそうに顔を逸らす。英莉は肩をがっちり掴み、ハルカを逃さない。 「その……スカウト、のはずだったんだけど……」 「……スカウト?何の?」 「沖津先生を、超人界に、スカウト」 「どういうこと?」  ハルカはため息

      • 「ミッション乱高下!」第5話

         英莉が銃を渡されてから、一週間が経った。   その日、ハルカから「今日の夜に怪物が来る。12時に銃を持って校庭に来て」と言われた。毎日バッグの底に隠していた銃に、やっと出番が来た。  射撃場なんて近くにないし、正直なところ、何の訓練もしていないし自信もない。それでも私が“選ばれた”ということなのだから、何か選んだなりの理由があるのだろう。何もしないままじゃ寝ざめが悪い。とにかくやるしかない。  家でジャージに着替え、リュックサックに銃を入れる。格好は校外学習そのものだが、

        • 「ミッション乱高下!」第4話

           休み時間になると、良子がハルカの席に嬉しそうに近づいた。 「ね、他にはどんなアニメ見てるの?」 「……いや、特には」 「えー、ほんとにー?異ソロ見てたんでしょ?他にも見てるでしょ」  口を尖らせる良子から逃げるように、ハルカが廊下へ出る。 「先生、さっきからなんでアタシばっかり見てるの?」  ハルカは、英莉が教卓から放っていた視線に気づいていた。英莉はハルカを逃すまいと廊下に立ちふさがり、歯痒さを露わにした。 「もう、せっかく人がチャンスを与えているのに!」 「何それ」 「

          「ミッション乱高下!」第3話

           翌日、いつもより1時間早く化学科職員室に出勤した英莉は、いつも通り半袖のブラウスの上に、長袖の白衣を羽織った。昨日の汚れた白衣は洗濯中で、今日の白衣は職員室に置いている予備だ。もう一度言うが、夏は、白衣に命を救われる季節なのだ。清潔な白衣を職場で切らしてはならない。  デスクに着き、昨日進める予定だった採点に集中する。まだ一人きりの職員室に、赤ペンの音がさらさらと響く。  明日の授業で返却する分までを一気に終えると、一息ついた。  やはり色々と、雑念が湧いてくる。  銃

          「ミッション乱高下!」第3話

          「ミッション乱高下!」第2話

           担任クラスの、無口な女子生徒が突然銃を教室でぶっ放した。 『火事です。火事です。1階で、火災が発生しました。落ち着いて避難してください』  サイレンとアナウンスが、この状況を無視して延々と繰り返されている。  火災の方がマシなんじゃないの?  色々と問題があり過ぎるが、取り敢えずは自分の命──  ──いや違う、私はこの子をどうしたらいい? 「せ、説明して……」 「へー……人間が銃を怖がるっていうの、本当なんだー……」 「…………はぁ……?」  そういう漫画とかの読み

          「ミッション乱高下!」第2話

          「ミッション乱高下!」第1話

           白衣は最高だ。今年も白衣に命を救われる季節がやってきた。  東京都立双原高校の化学科教員用職員室で、沖津英莉は羽織っている白衣の襟を固く握りしめた。  東京の7月の猛暑は当然耐え難いが、24度以下の冷房に半袖で耐えるのはもっと耐え難い。不運なことに、このコンパクトな化学科用の職員室には実に効率良く、満遍なく冷風が吹き荒れており、どこに机を配置しようが逃げ場など無い。  しかし今、私は半袖ではない。半袖のブラウスの上に、長袖の白衣を羽織っている。この白衣が無ければ凍え死ん

          「ミッション乱高下!」第1話