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【恋愛小説】私のために綴る物語(11)

第三章 友人と恋人の違い(3)

 多香子達が仙台に行く日がやってきた。女子会のような遠征旅行は久しぶりで、多香子も寂しさを忘れていた。
 東京駅で待ち合わせをして、皆と会うと新幹線に乗り込んだ。
「こういう旅行って今までやっていなかったのか不思議」
 前橋が改めて言い出していた。
「そう、みんなではあったのにね。女子だけってなんでやっていなかったのかな」
 伊藤が思い出すように言っていた。
「まぁ、実質一人旅でも、行けば誰かがいるから気にしていなかったよね」
 藤高も考えていた。
「多分私が、あんまりアウェイに、行こうとしていなかったからかな」
 多香子がそう言うと、他の三人はそんな事ないと口を揃えて言ってくれてうれしかった。
「夜は長いし、みんなの恋バナを楽しみにしてるから」

 ホテルにつくと、そこから特別な日が始まった。まだチェックインの時間ではないのに、ラウンジに案内されて、ウェルカムドリンクが運ばれてきた。手荷物の預かりをお願いすると、今手続きができて、荷物は部屋に運んでおくと言われた。これだけでもテンションは上がって、試合は二の次になっていた。

 試合には負けたが、本当に楽しみはこれからだった。ホテルに戻り、部屋に入った。ツーベッドルームのスイートルームはやっぱり広かった。4人共すごいと言って固まっていた。多香子は前橋と同じ部屋で寝ることにした。中間にあるリビングみたいな部屋のソファでも十分寝られる気がした。

 女子会特典としてスパークリングワインとちょっとした乾き物のおつまみと果物盛り合わせも運ばれてきた。
「これは後での楽しみだから、冷蔵庫ね」
 伊藤がにこやかに言った。藤高はみんなの顔を見ていった。
「お待ちかねのラウンジに行こう」
「流石にお腹がすいたね」
 多香子が言うと、前橋も笑った。
「スタグルを控えていたんだよ」

 軽食タイムはサンドイッチとコーヒー紅茶、この辺のメニューでお腹をある程度満たして。次の時間帯が一番の楽しみ、ディナータイムだった。

 カクテルタイムとお酒が入ってくると、口が軽くなってくる。多香子は塚嶺のことだけ言おうと思っていた。史之とのことを知っている人がいるのを承知の上だった。

「さぁ誰から告白してもらおうかな」
 藤高が前橋の顔を見て、周りを見渡した。
「それは言い出しっぺからだよね」
 伊藤が満面の笑みで言った。
「よ~し、めちゃ重い話をしようかな」
「えーっ重い話ですか。そんなの大丈夫?」

 多香子は思わず声を上げてしまった。普通に話すと、恋人と別れたばかりの自分こそ、重い話になるというものなのに。

「澤田さんの番だ」
「付き合っている人、いるの?」
「いるよ。まだそんなに経っていないけど」
「同窓会があってね。高校の時の。再会して」
「元彼と?」
「ちょっと親しかっただけ」
「へぇ、そういうことあるんだ」
「今回再会したとき、その子がそのことを彼に言ったんだ。彼が助けてくれって私を見て。この人って私のことが、今も好きなんだって」
「まぁ惚気ちゃって」
「一応確認したよ。不倫とか嫌だし。でも、今はいないっていうから、つきあうことにしたの」
「あぁ、あのキャラカフェの人?」
「なんでわかるの?」
「だって匂わせ投稿の典型だし」
「匂わせ投稿?」
「背景のシャツとか、腕時計とか、男の人がいるのをさり気なく見せてるやつ」
「うん、一緒だったよ」
「そう」

 きっと史之も見て、正弘の存在を感じたのだ。だから週末だけの男かと怒ったのだ。あの時正弘に注意されたのに、うかつだった。

「今度は連れておいでよ」
「そう、私達でチェックしてあげる」

 そう言われたこともあって、多香子は正弘を誘った。一緒に行こうと約束できて、サークルの連絡ボードに二人で行くと書き込んだ。

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瑞野明青
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