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どろぼんが盗んだ一番大きなものは読者の心かも『どろぼうのどろぼん』

ブックセラーズ&カンパニーが「一読三嘆」という企画を始めたというニュースを読みました。

「みんなで1冊の本を売る。」それで多くの人に届ける。私も過去何度も取組んできたし、今も離れられないテーマです。言葉にするのは簡単なのだけれど「売る」以上に「みんなで売る本を1冊決める」というのがどれほど大変な事か。
本屋大賞だってその”1冊”の決め方を真剣に考え考え、考え抜いた結果できたようなもんです。

こういった連続企画の1冊目というのは、その後の企画の看板にもなる1冊です。そこに選ばれた本とはどういうものなんだろう、という好奇心いっぱいで読み始めました。児童書として世に出てはいますが、これは間違いなく大人の心に刺さる優しい小説です。
どろぼん、という不思議などろぼうを取り巻く話です。彼が盗んできたのは誰もがその存在に気づかなかったようないらないものばかり。そしてどろぼんにとっては「物の声が聞こえるから連れ出した」というだけの話なのです。

誰にも気づかれずどろぼうをしていた彼が、ちょっとしたことで警察に捕まってしまったのが物語の始まり。
普通のどろぼうとは全く異なるどろぼんの供述に、その対応をする刑事や書記をする婦警が引き込まれていき…というお話です。

世の中には「どろぼうを褒めるなんてけしからん」っていう人もいるらしいです。でも、物語の中くらい「許される盗み」があってもいいんじゃないかと思うのですよ。
読んでいて、私だって無くなったってわからないものはいっぱいあるなあ。どろぼんが持ってってくれるのならそれでもいいかな。と思い始めてしまったくらい。

クラリスの心をルパンが盗んでいったように、どろぼんの優しさに心を盗まれる人は多発するでしょう。っていうか多発してほしい。
良い本を読ませていただきました。
こういう本をどんどん掘り出して世の中に届けていってください。過去似たような仕事をしてきた者として、めちゃくちゃ応援しています。

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