見出し画像

伊良部復活!『コメンテーター』

昨年読んで面白かった本ベスト5、を考えたときに(考えるだけで決められてないけど)『リバー』は確実に上位に入ります。本屋大賞にノミネートされなかったことで地団駄踏んだくらいですもん。『リバー』は犯罪小説、『最悪』も面白かったなー、とか『邪魔』ってのもあった。最近だと『罪の轍』もすごかったし、『オリンピックの身代金』もよかった…
などなど、奥田英朗のそれなりの読者なんです。

が、頭を切り替えないと出てこないのがこの伊良部シリーズ。
知識としては知っているんですけど、このシリーズで直木賞をとってるってのも何度確認しても信じがたいくらい、はじめて読んだ時には毛色が違いすぎて時が止まった本でした。奥田英朗複数人説があっても支持できます。
伊良部一郎という主人公の医者(色白で太ってて、なんかいかにも…な姿形の精神科医)にかかると、病んだ人たちが振り回されながらも復活していく、というひと言で言っちゃうとそれだけの小説なんです。が、直木賞受賞シリーズ。

伊良部自身が相当な困ったヒトなので、困って医者に駆け込んだヒトたちには同情しかなく、今までだと「早く逃げろ!!」と言いたくなるような悲惨な治療が行われているイメージでした。ところが、前作の『町長選挙』から長い年月が流れ久しぶりに出会った伊良部は、なんかわりとフツーの変な人に見えます。私が何かに慣れたのか、それとも世間がこの変態さについてきてしまったのか、読み終わった今もその謎は解けません。

世界は伊良部をまっていた、とおっしゃった方がいらっしゃいました。ほんとにそうだと思います。忖度も、色眼鏡も何もなく、ある物事を全て受けとめて当たり前のコメントを言う伊良部がなんか素敵な人に見えてきちゃった。社会に疲れたなーと思ったときは余計な事を考えずにこれを読むのがよいと思います。

重い本を読みたいという気持ちの時はぜひリバーを


いいなと思ったら応援しよう!