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『方舟を燃やす』に漠然とした不安との付き合い方を考えさせられた

不安と噂の大河ドラマみたいな小説でした。なんのこっちゃ。

子ども時代は学校の七不思議だの、世界の七不思議だのに夢中になり、恐怖の大王が降ってくるというノストラダムスの大予言に「未来があるのかないのか」と不安になったものでした。
小説中に描かれる、1967年からの社会の様子に、あの頃抱えていた”漠然とした不安”を思いだしました。昭和~平成~令和の時代に起こった様々な事件を切り取って描きだしたことで、私たちの抱えていた漠然とした不安の正体がなんとなく見えてきた気もします。
公害やオウム真理教、数々の都市伝説。その上で度々襲いかかる震災。確かにこんな時代を生きたら、なんだかわからない不安を持ち続けてもおかしくないよなあ…と。

主人公は飛馬と不三子という二人。いたって普通の人で、「きちんと自分の頭で考える。」ということを出来る理性を持っている事もしっかり描かれています。で、その二人が、自分の信念によってどんどん社会や家族とズレていくことになるのですが、その模様は読み手にとって決して他人事ではありません。
最終章に書かれている「コロナの時代」で、まさに私たちが右往左往したその姿だから。

情報はネットだけに氾濫しているわけではなく、善意も悪意も混じった形で人を襲ってきます。自分の頭で考えることは間違いなく大事だけど、それでも正しい選択を出来るとは限らない。
この先も、社会から不安が払拭されることはない中で、どんな生き方をしていったらいいのか、改めてそんなことを考えさせられる小説でした。



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