2023年9月の記事一覧
倫理観はどこまで遡及されるべきなのか『夜の道標』
法律には不遡及の原則というものがあります。
一方で、価値観や倫理観はどこまで遡及されるべきなのか。まさに今起きている事を見てそんなことを深く考えさせられています。
優生保護法、子どものネグレクト問題など、なかったことにしてはいけない深い問題が描かれた重い作品でした。
「今だからこそ大問題、だけど、当時はそれが正しいと思っていた」なんて話はここに出てくるだけじゃないでしょう。
価値観が違うのは世代
書かずにはいられない、作家の熱を感じた『未明の砦』
冒頭、共謀罪で誰かが追いかけられるシーンから物語が始まります。なに?テロ?スパイ?… と思ったものの何か空気が違う。そして、光景は工場で非正規で黙々と働く若者たちの一夏の様子に。
内容情報にも書いてあるとおり、若者たちによる大企業&公安との闘いを描いた物語です。昨今の時代背景をそのまま切り取ったような社会派サスペンスでした。
舞台となっているのは最大手の自動車メーカー、ユシマ。
世界的な自動車メ
様々な人の人生が歴史を紡ぎ出している、そんな事を感じた『霜月記』
いつの間にか「神山藩シリーズ」と謳われるようになっていました。が、そう謳うことで初めて読者が手にとりづらくならないと良いのだけど。
既刊を読んでいなくても楽しめるし、これまでの2冊『高瀬庄左衛門御留書』と『黛家の兄弟』を読んできた人には、藩の歴史も見えてくるようになる、というのが今回の『霜月記』です。
今回の作品は町奉行の家の親子のお話です。祖父左太夫は名判官と謳われながらも隠居し、なぜか遊里に