サンタクロースの落とし物 ④
暫くすると、奥の部屋から
1人のお爺さんが現れました。
そのお爺さんは白い髭をはやし
赤い服に赤い帽子…
「まるでサンタクロースだ」
と小さな声でブルーが呟くと
そのお爺さんは
「フォッフォッフォッフォッフォー」
と笑いながら
「まさしく、ワシがサンタじゃ」
と言いました。
そして…
「トナカイに話は聞いたぞ、
トナカイの落としたワシの物を
届けてくれたそうじゃな。」
「それがないとクリスマスに
困る所じゃった、ありがとう」
と、言いました。
ブルーは
「僕の家の前に落ちていたの。
このお菓子は、あの優しい
バーバラへのプレゼントでしょ?
これが届かなかったら、
バーバラが悲しむと思って…」
そう言ってサンタに袋を渡しました。
サンタはブルーの頭を撫でながら
「君は街の外れの家の子じゃろぅ?
君が小さい頃、何度かクリスマスに
プレゼントを届けに行ったから分かるんじゃ」
「ずっと君からの手紙が来なくて
心配していたんだが、
何故手紙をくれなくなったんじゃ?
プレゼントは欲しくなかったのかな?」
そう聞かれてブルーは驚きました。
「だって僕は1度もサンタさんに
手紙を書いた事はないよ…
僕のママとパパは死んじゃったから、
僕にはサンタは来ないんだって、
叔母さんが言ってたもん」
それを聞いてサンタは
「そうじゃったか…
パパとママは死んでしまったのか、
それは寂しかったなぁ…」
「じゃが…君の所に
プレゼントを届けた事はあるぞ。
わしはプレゼントを届けた子供の事は
全員覚えておるんじゃ。」
「だから間違いない!!
きっとまだ手紙の書けない君の代わりに
パパやママが書いてくれたんじゃろう」
と、言いました。
それを聞いたブルーは
なんだかとっても嬉しくて
涙がポロポロ溢れて来ます。
サンタはまた、ブルーの頭を撫でながら
「今年のクリスマスは
君に特別なプレゼントを贈ろう。
何が欲しい?」
と、言いました。
けれどブルーは首を横に振りました。
「僕の欲しいものはきっと
サンタさんでも贈れないよ…」
「僕がほしいのは…
パパやママや…
温かい家族だもん」
ブルーはそう言うと、
胸に詰まった想いが溢れ出し
「ウワーンウワーン」
と、泣きました。
サンタは暫く
ウワンウワンと泣く
ブルーの頭を撫でながら考えました。
すると…
「そうじゃ、良い事を思い付いた!」
そう言うとブルーを連れて
奥の部屋へと入って行きました。
奥の部屋では…
トンテンカンテン…チーン
騒がしく音が鳴り
オモチャ職人達が忙しそうに
オモチャを作っています。
サンタが一度
「ピュー」
と口笛を吹くと
騒がしい音が止みました。
「ララ、マーク、こっちへ来てくれ、
ほかの者は仕事を続けておくれ」
サンタがそう言うと、
またトンテンカンテン音が鳴り始め、
皆んなは忙しそうに仕事を初めました。
音のなる工場の奥から
サンタの所にララとマークが来ました。
「サンタ、どうしたんだい?
僕達に特別な用事かい?」
とマークが言いました。
するとサンタは2人に聞きました。
「君達は、子供を凄く欲しがっていたね?
けれど…なかなか君達の所に来てくれないと
前に聞いた事があったと思うが…
今でも同じ気持ちかい?」
と…
すると、もう1人のララが
「サンタ…
勿論今でも気持ちは変わらないわ…
けれど、私達の歳じゃぁもう無理よ…」
と、言いました。
それを聞いてサンタは
今までのブルーの話と
ある提案を2人にしました。
「今年の冬は、この子と君達で
一緒に生活してみてるのはどうだい?」
「この子の叔母さんは、
この子の面倒をあまり見ない様なんじゃ」
「こんなに優しい子を1人にするのは
可愛いそうじゃ、どうじゃろうか…
嫌なら断ってくれて構わんぞ」
それを聞いたララは目を輝かせて
マークを見ました。
マークはララの顔をみて
優しく微笑み静かに頷きました。
「よし、こっちは決まりじゃな」
そうサンタは言うと
「2人は君と暮らしたいと言っておるが、
君はどうじゃ?
君が嫌なら無理には言わないよ」
とブルーの目を見て聞きました。
「僕…
僕で本当に良いの?
体も耳も青くて皆んなと違う…
こんな僕で良いの…?」
と俯きながら言いました
それを聞いたララとマークは言いました。
「君の耳は空の様で気持ちが明るくなるわ」
「君の体は静かな湖の様で
穏やかな気持ちになるよ。
僕達と一緒に住まないか?
今年の冬だけとは言わずにずっと…」
そう言うと2人はブルーの側に行き
そっと抱きしめました。
ブルーは静かに頷き
2人の温もりと今までに感じた事のない
安堵を感じていました。
それを見ていたトナカイは
「ウフフ」と笑って
「良かった良かった」
と満足気。
それを見ていたサンタが
「お前のイタズラも
たまには役に立つもんじゃな」
と笑っていいました。
そして、サンタはブルーに
「ブルーよ
ここに辿り着く前に
嵐の様な風が吹いたと思うんじゃが
何故あの時戻らずに進もうと決めたんじゃ?」
と、聞きました。
するとブルーは少し恥ずかしそうに
サンタに歩み寄り
「あのね………」
とサンタにだけ
こっそり理由を教えてあげました。
それからブルーは
マークとララと一緒に暮らし始めました。
マークとララは今年のクリスマスも大忙し。
今年もブルーはチキンやケーキで
祝うクリスマスは送れません。
けれど、新しいパパとママの
お手伝いをしながら家族で囲む食卓は
ブルーにとって何よりもの贈り物なのです。
そして、その温かな贈り物は
これからもずっとブルーの傍に有るのです。
トナカイの優しいイタズラが
ブルーに届いたサンタクロースからの
形のない贈り物だったのかもしれません。
今年はどんな贈り物が
貴方の元にも届くのでしょうか…