人魚の恋の物語
宇宙に浮かぶ美しい青い星に
まだ人間が住んでいない頃のお話
宇宙に浮かぶ美しい青い星には
天使と人魚が住んでいました
地上の上を黄金色の光を放つ天使が舞い
雄大な海を人魚が泳いでいます
天使は空を舞い神様から貰った
命の種を大地に蒔きます
種が大地に落ちると、大地はキラキラ輝いて
その光の中から美しい花々が咲き乱れました
そして時折…
その光の中から
ミツバチや蝶が生まれます
ミツバチは
花と花の愛の交換を手伝い
その御礼に花から蜜を貰って
その蜜を愛するミツバチに届けました
蝶もまた
花と花の愛の交換を手伝い
その御礼に愛する蝶と共に
甘い蜜を貰いました
雄大な海では
人魚が海の中を泳ぎ波を作ります
人魚は作った波に乗せて
神様から貰った金色の雫を海に撒きました
撒いた雫は波に乗り
海の彼方此方で光輝き
珊瑚や海藻や貝となり
海の底を彩りました
珊瑚や海藻は波と一体となり
愛のダンスを踊ります
そのダンスを見た貝は
光輝き美しい真珠を作りました
そんなある日の事
大きな岩の上に1人の人魚は座り
キラキラと光る水面に波を作り
光と波で虹を作っていました
その虹の輝きが
空を飛ぶ天使の目に止まりました
海に輝く七色が美しく
天使が七色の光に近づくと
その先には見た事もない程に
美しい人魚が座っています
人魚は波の虹をうっとりと見ていると
その先に現れた黄金色の光が目に入りました
少し驚いた人魚が、その光の先を見ると
そこには天使が強く優しい眼差しで
こちらを見ていました
2人はひと時の間
互いに見つめ合い
静かに恋に落ちていきました
恋に落ちた2人は
太陽の光が輝く時に
人魚は天使と手を繋ぎ海面を泳ぎ
天使は人魚と手を繋ぎ水面の上を飛び
2人で海の虹を作りました
2人が作る虹の橋は
全てを繋ぐ架け橋の様で
お互いを想う愛の強さを感じます
けれど…
どんなに強く想い合っても
住む世界が違う2人が
ずっと一緒にいる事は
出来ませんでした
共に住まう事のできない2人…
三日月の夜は
天使が羽に魔法をかけ
海に羽根を落とすと
人魚への愛のメロディーが
海に響き渡りました
そして上弦の月の夜は
天使が送ったメロディーに合わせ
人魚が愛の唄を歌い
空の彼方に愛の唄が響きました
満月の夜は
2人で作った愛の唄を
空と海から奏で合い
陸と海は愛のメロディーに包まれます
下弦の月の夜は
天使が陸に咲いた花を人魚に送り
人魚は海の真珠を贈りました
そして月の光の無い新月の夜は
静かに2人の愛を確かめあったのです
2人は長い年月
想いを深め合い
愛を育みました
長い長い月日が過ぎ
やがて…
2人の命の光が源へ帰る頃
2人は約束を交わしました
いつかまた、この地に降り立つ時
今度は共に住まい同じ時を過ごそう…
と…
そして
人魚は泡となり海に溶け
天使は光となり空に溶け
源へと帰って行きました
天使と人魚が源へ帰った後も
その青い星の陸と海には
今もずっと愛のメロディーが
静かに響き渡っているのでした