お餅大好きお正月
駆け出しのライターとして出会ったメンバーたちが、毎回特定のテーマに沿って好きなように書いていく「日刊かきあつめ」です。
今回のテーマは「#正月」です。
餅つき機、ならぬ(電気)餅つき器、て今でも流通してるんだろうか。今でも、というか当時からどの程度流通してたのだろうか。今となってはもはやあやしい。
毎年年末年始を過ごす父の実家にその電気餅つき機はあった。
年末になると、自分の田んぼで少しばかり育てているもち米をその餅つき機にセットして炊き、自動でつき、捏ねてもらうと、パン生地みたいに、白くてつやつやでふわふわなお餅のかたまりが出来上がる。
乾燥して固くならないうちに、みんなでお餅を囲んで、小さく丸めて成型していく。だが熱いし指にまとわりつくしでこれがなかなかうまくいかない。
そんな私をわき目におばあちゃんは大きくてしわしわの手で手早く餅の固まりをちぎり、サッと丸め粉をまぶしていく。大きさも均等、どれもきれいな楕円形だ。
私には手に負えない餅たちもおばあちゃんには体よくまるめこまれている。
おばあちゃんの手つきをうっとりと眺めていた。(おい、手伝え)
おばあちゃんが作ってくれた餅は親戚中に配るのだが、2月くらいまでは無くならない。とにかく大量に作って冷凍しておく。
砂糖醤油やバター醤油で食べるプレーンな餅。よもぎを混ぜた草餅。さつまいもを練り込んだ淡黄色の餅。たまに頬張ると中に甘いこし餡が入った餅があり、「あ、これ当たりだ」とはしゃいで食べた。
寒くて辛い冬の季節。お餅のもたらす幸福感がありがたい。なんとなくいつものごはんが億劫な時、お餅は優しく私の胃袋と心を満たしてくれたのだ。
今やおばあちゃんはすっかりボケてしまったという。お餅を振る舞ってくれることなどもうないだろう。
たまには思い出してほしいなあ。みんなでお餅を丸めたお正月を。
文:べみん
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