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青森県のりんご産業に関しての私の見解
今日は私が取り組んでいるりんご酒事業と、そのベースにある青森県のりんご産業に関して考えていることを記載させて頂きます。
あくまで私個人の見解なので「そんな考え方もあるんだ?」って軽い気持ちでご一読下さい。
実はこの記事を書くきっかけは、今日見たNHKのニュースでした。
実は今年の津軽地域の雪害でりんごの木が大きな被害を受けている可能性が高いと言われています。
また、それに対して高密植栽培のりんごの木は思いのほか被害を受けていないというニュースでした。
確かに高密植栽培の枝は地面に向かって下がるような枝ぶりで雪の重さに抵抗していないので、もっともな話だと聞いていました。
しかし私は少しこのニュースに違和感を覚えました。
なぜなら、今までのりんごの栽培方法(丸葉)で大きくて丈夫な樹を育て、安定性を目指す生産方法から、高収穫の高密植栽培が優れているような表現に聞こえたからです。
昨今の青森県りんご産業は、高齢化・担い手不足などの深刻な影響でりんご園がどんどん減少しています。
その解決策のエースが高密植栽培というトレンド形成が加速しているのです。
しかし、どちらの栽培方法も本質的には生食用のりんご栽培であることは変わりません。
1年に行う仕事量も基本的には変わりません。
確かに高密植栽培は、植栽してから4年くらいで収穫ができ、今までの丸葉栽培に比較して収穫量も各段に上がると言われています。
そして整列された栽培方法なので当然オペレーションはスマートになります。
他方、丸葉栽培は約50年収穫できるものの、高密植栽培は約20年と言われています。(諸説ありますので一般論としてご理解ください)
お互い強み・弱みがある栽培方法ですが、私が危惧しているのは丸葉栽培が悪で、高密植栽培が善である…的なトレンド形成に流れないでほしいということなのです。
私が思う未来の青森県りんご産業は、もっと「多種多様な栽培方法の確立」です。
ですから丸葉栽培から高密植栽培にシフトするだけの未来は危険だと感じています。
未来は丸葉栽培も高密植栽培も共存しながら「加工用専門りんご園」も増えながら青森県のりんご園地の減少を防ぎ、多種多様な栽培方法を確立し、しかもどの生産方法も稼げる未来を創ることが一番だと考えています。
私の場合、今まで稼げなかった加工用りんごの需要をどんどん強化することで稼げる加工用りんご栽培に導きます。
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加工用りんご栽培に特化すれば、どんどん機械化も進み、耕作放棄園になりそうな園地をカバーしていく未来も創造できます。
生で食べるためのりんご栽培は手塩にかけて丁寧に栽培しますし、加工用に特化すれば機械化を推進してヨーロッパのような栽培方法も可能になります。
日本国内では生食用りんご生産が90%以上を占めています。
実は高齢化、担い手不足に陥っている大きな原因は「生食用りんご栽培」だけに特化したりんご園を形成しているからだと認識しています。
1年中、生で食べられるようにするために莫大な人の手がかかります。
冬は枝が高くならないように枝切、春からりんごが大きく育つようにするための摘果、また春から秋にかけて約10回程度の農薬散布、そしてメインイベントの手摘みの収穫です。
りんご農家は1年中休みがないと言われているのは生で食べるために生産しているからにほかなりません。
言い換えますと生で食べるりんごしか価格にならず、その他の選択肢が日本のりんご産業には少なかったということが言えます。
私は自分でりんご酒事業を3年前から開始したのと同時に、加工用りんごを地域から購入しています。
生で買うより当然安いのですが、納品されるりんごは生で食べるために生産した同じ労力のかかったりんご達です。
生食用で栽培したのに10~20%のりんごは傷がついたり日焼けをしたりして加工用に回ります。
いわゆる二軍落ちのようなりんごです。
何を言いたいのかというと、そもそも我々のような搾汁することが目的ならば生で食べるための膨大な労力は必要ないということなのです。
もう少し具体的に言うと、そもそも加工用りんご栽培をすると決めて生産をすれば摘果も必要なく、枝切りも必要なくなります。
収穫だってりんごの木に機械を取り付け、木を振動させりんごを地面に落とす収穫方法も出来ます。
また地面に落ちたりんごをキャッチするマシーンだってあります。
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私は昨年、りんご酒の本場であるドイツとフランスに学びに行きましたが、まさに加工用(シードルやアップルブランデー用)のりんご栽培は上記のように機会化が進み、労働分配率の低い稼げる農業をしていました。
やはり私達は青森県に生まれて生活していると、あまりにも身近なりんご産業に関して思考停止に陥る危険性が高いのです。
私はある意味、農家でもなかったし、りんご産業にも身を置いていなかったので自由に発想できます。
冷静に現在の青森県のりんご産業が危機であることに対しての大きな解決策は、我々のような加工用りんごを沢山扱うメーカーが同時多発的に成長し、加工用りんごの需要を作り、そして稼げる加工用りんご栽培をする農家を増やすことだと信じています。
それが間違いないことを実証するために、我々は今年の春から加工用りんご生産にチャレンジします。
そして生食用と加工用の生産における労働分配率、利益率などを高度に検証し、一緒に加工用専門りんご園を経営する仲間たちを増やしていこうと思います。
そんな思いを持って100年先の青森県りんご産業を子供たちに残したいと思い活動していきます。
決して高密植栽培を否定しているものではないのでご理解下さい。
多種多様なりんご産業と、その受け皿が増えてどの生産方法も稼げるようにリバランスしていくことが未来だという思いで記載致しました。
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写真はフランス・ノルマンディ地方のりんご畑の写真です!