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福祉施設に求められる組織マネジメント(Part1)

福祉サービス第三者評価とは(東京都版)

少し息抜きに、noteを更新しました。

私は東京都福祉サービス第三者評価(以下、第三者評価)の評価者の仕事もしています(年間平均30箇所程度)。
全国的に制度化されているものの、受審件数は伸び悩んでいます。
東京都は独自に補助金を出して、特養や保育園は実質義務化に近い形で実施しており、全国でも群を抜いて高い受審件数となっています。

第三者評価受審件数

(「東京都福祉サービス評価推進機構年次報告(平成30年度版)」より)

第三者評価は評価機関が勝手に評価スケールを作って、独自の手法に沿って行うのではなく、サービス種別に応じて、「標準の評価手法」が定められています。
よって、どの評価機関で受審しても、同じ"手順(プロセス)"、同じ"基準(標準項目)"で客観的な外部評価を受けることが出来ます。
ただし、その評価者により、良し悪しが出てきてしまうため、評価推進機構が毎年共通研修・専門研修を開催したり、各評価機関でも研修をしたり、OJTを通して、評価者の資質向上に取り組んでいます。

「組織マネジメント」と「サービス」の基準(標準項目)

第三者評価の"基準(標準項目)"ですが、「組織マネジメント」「サービス」の2つに分けられます。
「組織マネジメント」はどの種別も共通の項目となっており、東京都として福祉施設の組織経営・運営上、求められる水準として、項目が位置付けれられています。
「サービス」はサービス種別ごとに作成されており、さらに「サービスの"プロセス"」と「サービスの"実施"」に分けられます。
"プロセス"はサービスを提供するための仕組みについて聞く項目として、どの種別も項目は共通です(一部言い回しが異なりますが、項目の視点は同じ)。
"実施"はサービスそのものの内容を聞く項目として、サービス種別ごとに異なる項目です。


今回は「組織マネジメント」の項目で、特に福祉施設でこれから求められる"基準(標準項目)"を取り上げ、他施設・事業所がどのような取り組みをしているかご紹介したいと思います。
なお、「項目解説書」という資料があります。
その記載内容と私の経験からの解釈と一部齟齬があるかもしれませんが、予めご了承ください。

上記の「組織マネジメント分析シート」をダウンロードしていただき、まずは自己評価してみてください。
"職員自己評価項目"をお読みいただき、あなたが、

「出来ているな」と思えば、"そう思う"
「出来ていないところもあるなぁ」と思えば、"そう思わない"
「読んでも何を求められているかわからない」と思えば、"わからない"

にチェックしてみてください。
なお、"職員自己評価項目"に対して、「あなたからみて施設・事業所として取り組めているかどうか」という視点でチェックしてください。
ただし、①②という表記のある"職員自己評価項目"が「組織マネジメント」には設定されています。
①は主語が「事業所は」、②は主語が「私は」となっています。
基本的には、①のように「あなたからみて施設・事業所として取り組めているかどうか」という視点で自己評価していただくのですが、②については、あなた自身がどうかという視点で自己評価してみてください。

これからの福祉施設・事業所に求められる取り組み

さて、前置きはこれぐらいにして、自己評価の結果はいかがだったでしょうか。
ALL「そう思う(出来ている)」がついた施設・事業所の方はいらっしゃったでしょうか。
自己評価をしながら、「なんだこれ?」「こんなの取り組んでないよ!」といった項目もあったかもしれません。

第三者評価の訪問調査(経営層に対するヒアリング調査)を行っても、

【カテゴリー2 事業所を取り巻く環境の把握・活用及び計画の策定と実行】
サブカテゴリー2 実践的な計画策定に取り組んでいる
2-2-1-1

事業所は、課題をふまえ、事業所が目指しているこ と(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた 中・長期計画を策定している

2-2-2-1
事業所は、事業所が目指していること(理念・ビジョ ン、基本方針など)の実現に向けた、計画の推進方 法(体制、職員の役割や活動内容など)、目指す目 標、達成度合いを測る指標を明示している

【カテゴリー4 リスクマネジメント】
サブカテゴリー1 リスクマネジメントに計画的に取り組んでいる

4-1-1-3
事業所は、災害や深刻な事故等に遭遇した場合に 備え、事業継続計画(BCP)を策定している

【カテゴリー5 職員と組織の能力向上】
サブカテゴリー1 事業所が目指している経営・サービスを実現する人材の確保・育成・定着に取り 組んでいる

5-1-3-2
事業所は、職員一人ひとりの意向や経験等に基 づき、個人別の育成(研修)計画を策定している

5-1-3-3
事業所は、職員一人ひとりの育成の成果を確認 し、個人別の育成(研修)計画へ反映している

この5箇所の項目については、だいたいチェックが外れる(取り組んでいない)ことが多いです。

【カテゴリー2 事業所を取り巻く環境の把握・活用及び計画の策定と実行】

まずは【カテゴリー2 事業所を取り巻く環境の把握・活用及び計画の策定と実行】の2つの項目を解説します。

【カテゴリー2 事業所を取り巻く環境の把握・活用及び計画の策定と実行】
サブカテゴリー2 実践的な計画策定に取り組んでいる
2-2-1-1

事業所は、課題をふまえ、事業所が目指しているこ と(理念・ビジョン、基本方針など)の実現に向けた 中・長期計画を策定している

2-2-2-1
事業所は、事業所が目指していること(理念・ビジョ ン、基本方針など)の実現に向けた、計画の推進方 法(体制、職員の役割や活動内容など)、目指す目 標、達成度合いを測る指標を明示している

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