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VRC環境課 ガメザ与太話

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Do not overdo

「...ん...?」 ゆっくりと目を覚ますと3度目だろうか、見覚えのある天井とそこから伸びる宙吊りのレールが視界に入る。 「あー...またか。」 天井に向かってぽつりと呟く。 どうやらヘリに乗り込み、猫又に説教を食らっている途中に事切れたらしい。 既にリクライニングベッドでゆったりとしている上半身を、腹筋の力で起き上げようとすると全身が金縛りにあったが如く硬直し、猛烈な痛みで思わず奥歯を噛み締める。 「ん゛っっっっっっっっぐ!!!!!」 打たれ強さには心底自信が

Contain seeds

気がつくといつの間にか日が昇っても肌寒い季節。 吐いた息が白く膨らみ、金属が冷えるせいで肘の付け根が少しズキズキする。 あれから随分と時間が経った。軽度とは言え、電脳化した恩恵もあってか扱いも"失くす前"と何ら変わらないまでに回復した。しかし、そうは言っても自分の体では無いモノが付いているのだからどうしたって気にはなるものだ。 そんな冷えた手でダイナーのドアノブを握り、扉を開ける。 「いらっしゃいませ。」 「うーさみっ...」 「お一人様でしょうk...なんだまた君か.

Rough salon

「ふぁ〜あ、やっぱめんどくせ。」 あくびと煩わしさを漏らしながら、不揃いの翡翠色髪をポリポリと掻く。 「そう言うなよ、これも仕事なんだしさ。」 なだめるように紅い狼は言った。 切り返し、翡翠色の狐は紅い狼の手に持った【断ち切り鋏】を指差して言う。 「つってもアレだろ?こないだのヤツとそんなに変わらねぇんだろソレ。」 「変わったから試験するんだろ...それに前回のバージョンとは全くの別物に仕上がってるよコレは。流石はうちの開発だね。」 「ほぇー...見た目にゃあなんも変

Man without luck

「ガメザ先輩〜待ってくださいよ〜食べるの早すぎですよ〜」 「うるせぇ、目標見失っちまった分、昼飯の時間が削られてんだ。チンタラ食ってんじゃねぇ。」 昼下がり、少し遅めのランチを終えた2人組がいそいそと店を出る。 「え〜それは先輩があんな人混みの中でよそ見してたからじゃないですか〜」 「そういう時の為にお前がいるんだろうが、ふわふわ浮いてんのは脳ミソか?」 「あ〜!ひっど〜い!それに人前で能力使うなって言ってたのは先輩じゃないですか〜!先輩こそ記憶ふわふわ飛んでいってるんじ

Beer Garden

自分のデスクに腰を落としたのは就業時間から5分過ぎた時だった。 配属されたばかりの頃から向けられる同僚からの軟らかで険悪な視線には何も感じない。自身が反応するのは自分に対しての強い殺意、或いは覇気を纏った物のみで、それ以外は毛ほども意識に触らない。 廊下を出て奥に進んだ扉の先からはいつものアレを感じているが、安月給で済んでいるだけでまだマシな方だ。 処理係は声がかかる時以外、持ち回りで巡回をする。目を擦りながら装備を持ち出す為の書類を書く。 「ふぁ〜あ...」 「ガメザさ