ため息俳句 花水木
所用の帰りみち、緑の王国という植物園に立ち寄った。
日ごろ四季折々の移ろいを夫婦で見てきた、なじみの公園である。
ささめくや重なり明かし花水木 空茶
たくさんの言葉を濾しぬ花水木
老い二人おのおの生まれ別に死ぬ
花水木の季節である。
もうすぐに夏がやってくる。
昔、就職して間もない頃住んでいたアパートは旧甲州街道に面していて、歩道は花水木の並木になっていた。
木造二階建ての一階東角部屋であった。
仕事はとてもきつくて気の重い朝が続いていた。
そんなある朝、ドアを開けると、花水木の白い花があった。
ということを、思い出した。
新調のスーツも馴れて花水木
あの頃は、老いということなど、思いさえしなった。