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#33 能登人にびやう〳〵として吹雪過ぐ 前田普羅
2月7日午後10時30分現在、能登地方には大雪警報と波浪警報が出されている。
「風:西の風強く後北西の風強く海上では北西の風非常に強く
波:4メートル後5メートルうねりを伴う」と。
能登人にびやう〳〵として吹雪過ぐ 前田普羅
まさしく、この句のようなあるさまなのかと、推察するのであるが。
「びやう〳〵(びやう)」というのは、ここでは吹雪きの擬音としてよむことがきる。ただ、「渺々」といえば、広く果てしない、遠く遙かなさまという意である。さらには、狂言では犬が吠える音を〈びょう〉という。びょうびょうとなると、犬の遠吠えのようにも聞こえる。
〈びょうびやう〉という音には、複雑なニュワンスが混じり込んで聞こえてくる。
まして、災害復興半ば、いや、半ばなどとは到底いえない現状だと聞く。
それについては、言葉もない。
この句の作者前田普羅は、関東大震災で家財一切を失い、翌年富山に移り住んだのだが、昭和20年8月1日富山空襲でも家財蔵書の一切を焼かれれてしまったという。
立山・飛騨・能登の風土にも通じていた。「能登蒼し」という句集もある。
先ほど窓から空を見ると、星空、風もない。
自分の住む関東平野の中央あたりは、一年の間に数度の降雪があるだけだ。雪によって生活が滞るというのはなくはなかったが、自分の記憶ではそう何度もあったわけではない。
そうしたところに住んでいると、「雪」というものがどんなものか、本当のところはわかっていない。
心からしなのゝの雪に降られけり 一茶
その「こころ」がしっくりとは思いゆかない。
とにかく、一事が万事、そういうことが多くて、・・・。