ため息俳句 柿・林檎
柿は、畑にある。
苗木を植えたのは十年以上経つが、正確に何年前かは忘れた。何という種類の柿かということも、夫婦して忘れた。
柿は、女房の大好物で、というより、果物一般がなんでも好きなのだが、柿は中でも好きらしい。
自分は、果物を好まないというわけでないが、大体果物は皮をかぶっているものだ、そこに抵抗がある。蜜柑にしろ、林檎にしろ、柿にしろ、その皮を剥くなんて面倒は嫌だ。だがら巨峰という奴には往生する。それでも、皮を剥いて「お食べなさい」と、鼻先に突き出されれば、一かけ位なら付き合ってやる。それもしないと、先様が不機嫌になるからだ。
畑の柿は桃栗三年柿八年というが、もっと短い年月で収穫できた、この頃は毎年どっさりとなる。ゆえに食べ放題の家人は大満足だ。
林檎は、見るのが好きだ。果物にもいろいろあるが、子供のころから林檎に一番親しみを感じる。あの林檎の色と艶と形は、果物といえばまず頭に浮かぶものだ。
この秋ごろは昔は小学校の遠足があった。弁当と規則に従って僅かなお菓子を入れたリュックに、丸ごとの林檎がひとつ。
父親の故郷は長野であったので、家族で帰省した折に、篠ノ井線の車窓から手の届きそうな近さに、赤い実をつけた林檎あったことを思い出す。
手の届きそうなということなら、柿の木はあちこちの家の植えられていたので、この季節なると、よその家の柿を黙っていただく悪ガキが横行した。それを警戒する異常に怖いおじさんがいて、捕まったらどんな目にあうかも知れないと、絶対に手を出すはずもない女の子たちまでひどく恐れて、その家の前は通らないようにしたものだった。
そういうことで、皮があるから嫌いだという証拠に、果物で好きなのは、皮ごと食える苺であり、シャインマスカットである。この二つなら歓迎である。