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苦手な分野の作品だけどこの映画にはマイッタ!


苦手な分野の映画でも時には驚くほどの傑作と出会うことがある。

全く観に行く気がなかったが、ある人があまりにもラジオで絶賛するので観に行く気になったのが『マッドマックス怒りのデス・ロード』。

3D映画とは対極に極限まで生身の体のリアリティが爆発した作品だ。

『きっかけ屋☆映画・音楽・本ときどき猫も 第25回』

過去の『マッドマックス』(1979)、『マッドマックス2』(1981年)、『マッドマックス/サンダードーム』(1985年)、どれもそれほど楽しめなかった。

『マッドマックス怒りのデス・ロード』はサソリを踏み潰す冒頭の不気味なシーンから目を見張った。

主人公たちが終始悪の集団に追いかけられるという図式は、幌馬車隊がインディアンに追いかけられる西部劇のパターンを踏襲している。

単純な筋立てで一時間半手に汗をにぎらせるジョージ・ミラー監督は制作当時70歳。

年齢をまったく感じさせないパワフルなエネルギーに驚く。

特殊撮影にたよることなく役者たちが極限まで体を動かしたエネルギーが画面からほとばしり出る。

撮影中に死者は出なかったのだろうかと心配したほどだ。

血と汗が飛び散る男っぽい映画の中で女性大隊長役を演じるために頭をそり黒いグリースで顔をぬりたくり左腕を金属義手にして戦うシャーリーズ・セロンの役者魂が半端じゃない。

セロンは時としていったいこの女優は誰だろうと思わせるほど変貌する。

実在の連続殺人犯アイリーン・ウォーノスを演じた『モンスター』(2003)では役作りのために脂肪と糖分たっぷりのドーナツを毎日大量に食べ14kg体重を増やし、眉毛を全部抜いて演じ、アカデミー主演女優賞、ベルリン国際映画祭銀熊賞、ゴールデングローブ賞 主演女優賞(ドラマ部門)などを受賞した。

絶世の美女シャーリーズ・セロンとは思えないほど見事に醜悪な女になりきっている。


ちなみに1990年〜2015年にセロンが出演した作品をこちらで。


苦手な分野の映画に引っ張りだしたのはこの人です。


役者魂ということでは安藤サクラの『百円の恋』(2014年)も忘れられない。

家で甥っ子とパソコンゲームに興じる自堕落な32歳の引きこもりが『百円の恋』の主人公の一子。

実家を追い出されて一人暮らしを始めた一子は、アルバイト先の100円ショップにバナナを買いに来るストイックなボクサー練習生に恋をして自分もボクシングを始める。

この映画の面白さは物語ではない。

映画冒頭のシーンで甥っ子とパソコンゲームをやりながらお尻をぼりぼり掻いている見るからにだらしない体つきの不潔っぽいアラサーの一子がボクシングを始めてから体の線や顔付きがみるみるうちにシャープになる過程だ。

安藤サクラは何キロ減量したんだろう。

撮影期間は2週間と報じられているが、その短期間でよくここまでと信じられない変貌ぶりだ。

中学時代にボクシング経験のある安藤サクラはまさに適役だった。

この作品にビックリして『百円の恋』の前作でサクラの姉の安藤モモコ原作・脚本・監督による『0.5ミリ』(2013年)を観た。

『0.5ミリ』でサクラが演じているのは、ワケアリ老人を街で見かけると相手の弱みにつけ込んでおしかけ住み込み介護者として渡り歩いている山岸サワという元看護ヘルパー。

ジジ殺しの役を可愛らしく演じる安藤サクラの演技には大笑いする。

この2作品で安藤サクラはこれらの賞を受賞している。

第88回キネマ旬報ベスト・テン 主演女優賞(『0.5ミリ』『百円の恋』)
第38回日本アカデミー賞 優秀主演女優賞(『0.5ミリ』)
第29回高崎映画祭 最優秀主演女優賞(『0.5ミリ』)
第69回毎日映画コンクール 女優主演賞(『0.5ミリ』)
第57回ブルーリボン賞 主演女優賞(『0.5ミリ』『百円の恋』)
第19回日本インターネット映画大賞 主演女優賞(『0.5ミリ』)
第24回日本映画批評家大賞 主演女優賞(『0.5ミリ』『百円の恋』)
第39回日本アカデミー賞 最優秀主演女優賞(『百円の恋』)

安藤サクラはその後映画『万引き家族』、テレビドラマ『まんぷく』、大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』などでも見かけるようになった今最も注目する女優の一人だ。

この続きはまた明日。

明日は映画の話と言えばどうしても外せない3本の作品についてです。

お寄り頂ければ嬉しいです。


連載はここから始まります。
第1回 亀は意外と速く泳ぐ町に住むことになった件。


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