空き家銃砲店 第八話 <縁側>
居間と仏間の南には一本の縁側が走っている。祖父は足の部分が引き出せるようになっている籐の長椅子を置いて、日によってはお気に入りの庭を眺めていた。
縁側の両端には青銅のつるし灯籠がぶら下がっている。小学生の頃、夏にはここで祖父から菩提寺が出てくる怖い話を聞いたものだ。
今のように窓用の転落防止の柵なんてものはない時代。同居していた3歳の私はあっさり、縁側から沓脱石(くつぬぎいし)に頭からおっこち、丁度それを目撃した母は「死んだかと思った」。
そうして人が住んでいた時代を過ぎ、家は過去の夢を見ている。
おまけ
血は争えないもので、三十年後の二世帯住宅でも同じようなことがあった。ガラス窓があいていて、同じ年頃の娘は網戸を突き破って沓脱石に落ちた。幸い、網戸がクッションになって衝撃が弱まり、偶然そこに立っていた父が娘を受け止めた。
ちなみに、つるし灯籠は平成の終わりに父が、西の土蔵の扉と一緒に骨董屋さんに売った。なんでも骨董屋さんのお客さんで、ぜひとも昔の木と鉄の扉が欲しい人が居たと言う。新しい命を吹き込まれて大切にされているだろうか。
「一個残したからいいだろ」と言っていたが、灯籠は一対、二つで一つなのである。まあ私あれこれ骨董屋に売りはらったから大きなことは言えないが。
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