『サムライのおしゃれ―印籠・刀装具・風俗画―』から見えた唯一無二の職人技
大学生時代はめちゃめちゃ丸の内を活動拠点にしていたというのに、こんなところがあるのを恥ずかしながら初めて知りました。
そんな私が初めて足を運んだ静嘉堂文庫美術館で観てきたのはこの展示。
テーマは「サムライのおしゃれ」。
サイトで告知されているように、主に印籠・刀装具のデザインに注目した展示です。
風俗画とも記載がありますが、こちらは当時の風俗画から武士がどのような装いをしていたかを現物を前に確認することができます。
一部の展示エリアは撮影OKとのことでしたが、会期中のため(と言っても今日までだけど)写真の掲載は控えた上で感想を簡単に書いてみました。
感想テーマ:美術工芸品としての見応え
この企画は展覧会名にあるように「昔の人ってどんなおしゃれをしていたんだろう?」という興味に応えてくれることはもちろんなのですが、純粋に美術工芸品の展示としてとても価値があります。
例えば、印籠の展示。印籠は今でこそ所持している人はそういませんが、TVドラマ『水戸黄門』をきっかけに誰でも知っているものになりましたね。
本来は常備薬を入れて持ち歩くための便利アイテムだったそうですが、次第に美術工芸品として扱われることが多くなっていったのだとか。
水戸黄門だけのぼんやり知識だと、さも偉い人の象徴のように思われがちですが、あれは印籠自体ではなくそこに描かれている家紋が重要なのですね。
さて、この印籠ですが、今回の展示の中では私が特に気に入った部分でもあります。というのも、本当にデザインが多種多様で、所持していたであろう各人の好みや嗜好が図柄や根付のモチーフに強く表れているように感じられたからです。なんなら、今の時代に印籠を流行らせてもいいくらいにはおしゃれ。
みんなでやりませんか? My印籠。
…と言っても、作るのはそんなに簡単ではなく。ネットで調べるとそれらしい工程は出てくるものの、やはり本物は工芸品たる熟練された技術によって作られていますから、工作で箔のあるものにするのは難しいですね。
そして、そんな職人の手造りの一級品とも言える印籠がずらりと並んでいるのを見ていると、昔はこういった品々は職人に"依頼する"のではなく、そもそも職人にしか出来ないことだったという事実から、大量生産・大量消費が当たり前の現代日本に暮らしている人間にとってはその技術力の高さに圧倒させられるしかないのだと感じました。
もちろん現代にも伝統工芸品を手作業で作る職人さんはまだまだいらっしゃいますが、時間をかけずに作って欲しい時、ある程度似てるものや代わるもので替えがきく依頼先がある現代とは、物を大事にする感覚も違っていたのかもしれません。
数百年前の人の肌で使い込まれた実物を眺めている時、そんなことを考えていました。
この展示は印籠以外のものもとても面白かったのですが、私からは一番印象に残った部分のみ記述させていただきました。
他、刀装具の展示とありますが、実際の刀身の刻印や装飾も見ることが出来ます。歴史に詳しい方もそうでない方も、丁寧な解説を読んでくださればその歴史的価値の重要性が理解できると思います。
今回は国宝も並んでいるということで、規模はコンパクトながら見逃せない箇所がたくさんあります。
会期最終日に言うことではないんですが………。
すみませんでした。
もし似たような展示があれば、また行ってみたいと思います。
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