雑記:日本共産党について

割引あり

衆院選および国民審査が先日10月27日(日)に終わった。与党の議席数は過半数を割り、女性議員は過去最多の73人となった。今回の選挙に関する基本的な総括は国内メディアではなくBBCがわかりやすく端的にまとめている。とりいそぎ、わたしとしては、女性議員が2009年の54人を上回ったことが今回の選挙で唯一よろこべることかなと思っている(自公政権には昔からうんざりしているので与党が過半数を割ったこともよかったとは思っているが、その事実一つをとって喜べるような感覚がわたしにはない)。むろん、73人になったところで全体の何%ですかという話はあり(極めて少ない)、怒りがおさまるわけではない。とはいえ、課題は以前として残っているものの、与党が過半数をわったり政権交代が起きるのとはわけが違って、女性議員が一気に増える(男性議員が一気に減る)という現実はかなり想像しづらい。そういう意味において、クォータ制の導入などをしない限りは地道に進めていくしかないこの問題においてわずかながらでも前進が見られたことはよかったと思う。
ちなみに、日本記者クラブ会員の柴田優呼氏はこの点について、「元々、政治分野のジェンダー平等最底辺国なのだから、選挙になると『過去最多』が起きて当然」とツイートしているが、これは端的に事実誤認。ニュースでもしっかり2009年の記録を更新したと書いているし、前回の衆院選が2009年なわけがない(2009年のあと、2012、2014、2017、2021年にあったが、2009年の54人は上回っていない)。心情としてはわたしも柴田氏にとても共感する。これくらいで喜んでしまうような状況があること自体がすでにジェンダー平等から程遠い場所に日本はいるということを示しているからだ。しかし、だからといって何をいってもよい、ましてや事実と異なることを含んだ主張はしないほうがよい。また与党やその支持者にバカにされてしまう隙をつくってしまうだけだからだ。

さて、前置きは終了。今回書きたいのは、日本共産党(以下、共産党)についてである。共産党の「共産」とはもちろん共産主義の共産であり、党のホームページにもしっかりと「社会主義・共産主義の社会をめざ」すことが記載されている(当然だろう)。しかし、いち素人であるわたしがぼんやり眺めている限り、共産党が本気で社会主義・共産主義の実現を目指しているようには見えない。いや、目指しているように見えたとしよう。仮にそうだとして、共産党支持者の全員もそれを目指しているのだろうかという疑問がわたしにはある。ガチ共産主義者の党員や支持者もいるだろうが、どうも、そうではない支持者も少なくない数いるように見えるのだ。その人たちは社会主義や共産主義の到来を期待しているのではなく、おそらく、共産党が日々発言していることや、打ち出している具体的な政策、あるいは今回の衆院選で与党が過半数を割る大きな要因となったと思われる裏金をスクープした『しんぶん赤旗』に対する信頼感があって共産党を支持していると思われる。
便宜的に、前者のガチ共産主義者をタイプA、後者をタイプBの支持層とおいてみよう。この2つのタイプの支持層を前に、共産党自身は本来であれば党が見据える未来をまず支持層全体に対してもっと明確に打ち出すべきにもかかわらず、それを避けているようにわたしには見える。もし、おそらく金銭的な支持も厚いと思われるガチ共産主義者とともに本気で社会主義・共産主義の到来を文字どおり目指しているならばそれをもっと明確に打ち出すべきなのに、それをしないのは、おそらくそれをするとタイプBの人が離れていく可能性があるからではないかと思われる。反対に、タイプBの支持層に合わせて現実的な路線を選択しそれを明確に打ち出す、すなわち、社会主義・共産主義の到来を本当の意味ではいまはもう望んでいないのだということを打ち出せば、これまでの党の歴史を清算することとなり、タイプAの支持層は離れていく。むろん、こちらを選択した場合は党名を変える必要もあるだろう。

共産党支持者、おそらくタイプBの支持者と思われる人の中には、「今回の裏金のスクープもあったし、なぜ共産党の支持者が増えないのか不思議でたまらない」といったような反応を示している人もいる。あるいはもうちょっと引いた目で、支持してはいるものの、「共産アレルギー」や偏見といったものがまだまだあるから増やすのは難しいよねと悲観的に捉えている人もいるかもしれない。同時に、間違っても(たとえば比例で)共産党には入れないという人たちは、「なぜ共産党支持者は共産党がこれ以上に発展すると思えるのか」と不思議に思っていることもあるだろう。そう書いているあなたはどうなんですかという点について書いておくと、わたしはとりいそぎ後者の立場に近い。
たしかに、共産党、『しんぶん赤旗』の功績はいろいろとある。しかし、共産党がその名を偽ることなく本当に社会主義・共産主義を目指しているならば、わたし個人はそうした社会を望んでいないので、個々の政治家はともかく、党全体を支持することはできない。91年のソ連崩壊をもってして「共産主義は失敗だった」という認識をもっているため、ソ連あるいはいまの中国共産党とは違うかたちでの社会主義・共産主義のヴィジョンが提示されない限り、支持するかどうかのスタート地点にも立っていない。それは「共産アレルギー」や偏見ではなく、歴史の教訓を踏まえた判断だと思っている。言い換えると、もし共産党が上述のようにタイプBの支持層に合わせ社会主義・共産主義の到来を捨て、党名も変えて新たなスタートを切るならば、党全体として支持する可能性は大いにあり得る。換言するならば、その2つに1つしか選べない状況と対峙することを避け続けている限り、共産党が大きく躍進することはかなり厳しい戦いだろうといわざるを得ない。わたしのように思っている人は決して少なくないと想像しているからだ。

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