ストラグル
朝の3番線は、今日も人が多い。
ごった返したホームに車輪の軋む音が聞こえ出すと、
人々は静かに闘志を燃やし始める。
もちろん、私も例外ではない。
憂鬱な通勤を、いかに快適にやり過ごすか。
電車を待っている間、何通りもシミュレーションを行った。
ここ最近は敗戦続きだが、今日こそは。
いよいよ、車両が見えてきた。
手提げ鞄を両腕で抱きかかえる。
これで、少しは痴漢と間違われずに済むだろう。
手を遊ばせたまま乗る事なかれ。
これが長年の経験で得た教訓だった。
ブレーキをかけながら、私たちの目の前を壁が駆け抜けてゆく。
次第に列車の流れは緩やかになり、
4両目中央のドアが止まる。
窓から中の様子が見える。今回も強敵だ。
しかし、よく注意して観察すれば、必ず活路はある。
深く息を吸って、吐く。
そして鋭い空気の音と共に、火蓋は切って落とされた。
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