Herbei Mann - Memphis underground (1969)
本作はリーダーのハービーや南部をソウル系のミュージシャンのソウルフルな演奏よりもサイケデリックに歪むラリーとノイズ発生器と化したソニーの2人による1969年だからできた演奏が聴きどころです。ソウル、ロック、ソウルジャズ、電化ジャズ、フリージャズが共存し混ざり合いイージーなところから一気にジャズのディープで前衛なところまで連れていかれてしまうある意味恐ろしいアルバムですがこのギリギリのバランスで成り立つ空中分解しかねない危うさや面白さはこのアルバム独特のものです。
メンバー
ハービー・マン:フルート
ラリー・コルエル、ソニー・シャーロック:ギター
ロイ・エアーズ:バイブラフォン、コンガ(5)
ミラスラフ・ヴィトウス:ベース(4)
メンフィスリズムセクション
レジー・ヤング:ギター
ボビー・エモンズ:オルガン
ボビー・ウッド:ピアノ
トミー・コグビル、マイク・リーチ:ベース
ジーン・クリスマン:ドラム
Memphis underground
フルートとバイブラフォンが軽快なナンバー。タイトなドラムやリズムギターはソウルフルなもののソニーシャーロック?のヒステリックなギターが入ると一気にサイケデリックになります。LPの解説ではソロはラリーとありますが個人的にはソニーがソロでバックでもう一本ファズをかけたリズムギターが控えめで鳴っていてそちらの方がエキセントリックさが少ないのでラリーな気がします。
New orleans
歌詞をつければヒットするソウルになりそうなファンキーな演奏が演奏がかっこいい曲。過激組のいないフルートとグルーヴを楽しむソウルジャズナンバーです。
Hold on I’m coming
サム&デイブのカバー。このアルバムで1番エキサイティングな演奏で、ソロではどのメンバーも熱く気合の入った演奏をしてます。特にロイエアーズの個性的で後のフュージョン時代とは異なる演奏とソニーのぶっ飛びすぎたソロの最後ラリーがドローンを効かせたリズムで入るとタイミングを見計らってハービーとロイが切り込んでくる瞬間がゾクっときます。この曲に限らずどれもソウル、ブルース、ゴスペルの影響が強いメロディ&リズムなのが拒絶反応を示す人がいてもおかしくないほどの前衛を受け止めるクッションになっているように感じます。
Chain of fool
ドンコヴェイの曲でアレサフランクリンのカバーが有名です。ギターがロック風の味をつけていますがソウルジャズ的な演奏が続きラリーのブルースを経由したサイケロックのようなソロに入ります。個人的にはラリーコルエルってジャズとして聴くにはうるさいしロックとして聴くにはテクニカルすぎてあまり好きではありません。むしろ初めて聴いた時大嫌いだったソニーシャーロックの方が吹っ切れていて面白いと思うようになってきました。
Battle hymn on the republic
教会でとったようなロングトーンのオルガンをバックにした美しいバラードナンバー。フルートの澄んだ音色を存分に活かした演奏が沁みます。ノイジーな曲が多いアルバムは最後に美しいバラードが入ることでよりいいものを聴いた気分になります。
同じ頃にソニーシャーロックはハービーが設立したアトランティックのサブレーベルからハービープロデュースでソロアルバムを出しています。演奏はもちろんですがソニーの当時の妻であるリンダのアフリカの文化とジャズとゴスペルを覚えたオノヨーコみたいなボーカルが印象的です。野蛮であり高貴、美しくさと暴力的という相反するものが混ざりあった狂気すら感じるサウンドは毎日聴きたいタイプではないですが強烈な印象を残しジャズの概念をぶち壊してくるはずです。