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山本邦山、横山勝也、沢井忠夫、 宮間利之とニューハード- 琴、尺八、ビッグ・バンドによるスタンダードボッサ(1968)

いままで紹介したアルバムの中でおそらくミュージシャン名、作品名共に一番長いであろう本作はビッグバンド、尺八、琴によるジャズボッサ集です。尺八の山本邦山さんは人間国宝の方で伝統的な純邦楽はもちろん菊地雅章さんとの銀界や原信夫さん率いるシャープ&フラッツ本作のニューポートジャズフェスティバル公演に参加し高い評価を受けたほか、イージーリスニングやインストの演歌まで幅広い活動をしています。余談ですが邦楽とは元々雅楽等の日本の伝統音楽を指す言葉でしたが海外の流行歌を洋楽と呼ぶようになったためそれに対して日本の流行歌を邦楽、今まで邦楽と呼んでいたものを純邦楽と呼ぶようになったそうです。琴奏者の方の情報は分からないもののストリングスのようでもありガッドギターのようでもある響きは意外とマッチしています。ニューハードは日本軍軍楽隊出身のサックス奏者宮間利之さんによって結成されたバンドでミンガスの直立猿人のカバーからイージーリスニングまで幅広い活動をしていました。本作はブラス中心ということもありボサノヴァと言うよりはボサノヴァでよく演奏される曲のジャズカバー集といった雰囲気でソフトながらもエッジ―なブラスセクションがヴァーブや初期のCTIに通ずる一枚です。

メンバー
山本邦山、横山勝也:尺八
沢井忠夫:琴
宮間利之とニューハード:ブラスセクション、フルート、ピアノ、ギター、ドラム、ベース
演奏者不明のパーカッション

Adieu Trietesse
哀愁ある尺八の音が印象的です。琴の音もギターのようにもストリングスのようにも響き和楽器とボサノヴァの相性の良さを感じます。ブラスセクションもシャープな響きで甘いだけでないものにしています。

Look Of Love
ニューハードだけの演奏で気だるい音からシャープな音まで幅広いホーンアレンジと哀愁あるソロが印象的です。

Sunny
トロンボーンがリードをとる曲でトロンボーンらしい響きを活かした編曲です。

II Bacio
アップテンポのサンバ調のナンバー。艶やかなサックスソロがかっこいいです。

Mas Que Nada
3曲ぶりに尺八が入ります。尺八がメロディをとるとギターとピアノのユニゾンにバトンタッチしますがここがモッドな雰囲気で実にかっこいいです。

Constant Rain
琴をフィーチャーした曲でリズムも大太鼓調で和風な一曲ですがブラスセクションやピアノといった洋の楽器も違和感なく混ざり合っています。

Vivre Pour Vivre
再び和楽器なしのボサノヴァナンバー。ブラジルのともアメリカのとも微妙に異なったラウンジ―な洒落たサウンドです

Un Homme Et Une Femme
シャバダバダというスキャットを尺八が歌っています。実際には歌ってはいませんがそう聞こえます。

Ague de Beber
この曲は本物のスキャット入り。和風な音とボサノヴァが融合した良カバーです。

Girl From Ipanema
最後はバンドのみの曲です。ムーディーながらもジャズらしいアドリブを入れることでムード音楽にならないようにしています。

コネクション:アストラッドジルベルト
彼女もニューハードをバックにしたアルバムを作っています。ただこれが編曲者が良くなかったのかレコード会社の指示なのかボサノヴァビートの演歌にカタコトの日本語ボーカルのガッカリ作品でした。渡辺貞夫さんが日系ブラジル人のシンガーのために書いた曲が二曲あったり、ここでしか聴けないアストラッドが歌うマシュケナダがあったりと選曲はめちゃくちゃいいだけに惜しい一枚でした。