見出し画像

Wooden Glass. Live (1972)

レアグルーヴ界の聖杯とも言われていない本作ですがオリジナルの希少価値とそのバンド名は聖杯を思い出さずにはいられません(インディジョーンズフリークの方にはわかってもらえるはず)こうしたレアグルーヴの希少盤はその希少さ故に内容以上の過大評価になりがちですが本作は内容も間違いなく最高の一枚。再発時のキャッチコピーのファンクの神が舞い降りたというのも誇張でもなんでもなくそうとしか思えないくらい熱くグルーヴィな演奏です。幸い再発のCDや配信ならお安く聴けるのでジャズファンクが好きな人、何から聴けばいいかわからない人におすすめの一枚です。

メンバー
ビリーウッテン:ヴァイブ
ウィリアムローチ:ギター
ハロルドカードウェル:ドラム
エマニュエルリギンス:オルガン
Discogsによるとウィリアムローチはこの日の演奏が唯一の録音のようです。それ以外のメンバーは時期は微妙に異なりますが69年から71年頃グラントグリーンのバンドに所属していて71年のVisionsにはハロルド、エマニュエル、ビリーの3人が参加しています。

Monky Hips And Rice
ヘヴィなオルガンのベースがかっこいいファンクナンバー。クールなサウンドのヴァイブが乱れ打ちによって熱々のファンクサウンドへ変化しています。ヴァイブの次にソロを取るのがギターでずっとワウをかけてファンキーにうねりまくる演奏を繰り広げています。観客か演者かは分かりませんがここぞというときにホイッスルをピーピー吹いて熱気を煽るのがまたファンキーで最高です!

We’ve Only Just Begun
カーペンターズのカバー。4人中3人が参加した一時期所属していたグラントグリーンのVisionsにも収録されています。ビリーのヴァイブはメロウサウンドですがバックではハロルドのファットバックなドラムとエマニュエルの凶暴なロングトーンのオルガンがファンキーに煽りまくります。アドリブになるとビリーまでファンキーになって原曲の面影は全くない熱々のファンクジャムです

Joy Ride
クールなヴァイブがメロディを叩く後ろでドラムとオルガンが暴れ回っています。オルガンソロの後のギターソロではウィリアムのグラントグリーンのようなしつこいギターソロのバックでグルーヴィなベースをぐりぐりと弾き倒しています。

In The Rain
ギターやオルガン、ドラムが雷鳴や雨音を再現するイントロが面白い曲。重心低めのグルーヴィなジャズファンクナンバーです。オルガンのフットペダルでベースを弾いていますがこの時代のジャズファンクではとても珍しいと思います。

Day Dreaming
アレサフランクリンのカバー。オリジナルはタイトル通り白昼夢のようなメロウでドリーミーなサウンドでしたがここでは勢いに任せて突っ走るアップテンポのジャズファンクにアレンジしています。演奏はもちろんですが編曲のセンスもかなりあると思います。

Love Is Here
スプリームスのカバー(オリジナルのタイトルはLove Is Here and Now You’re Gone)オリジナルのポップなメロディを残しつつ12分にわたる熱々のファンクジャム大会が繰り広げられます。12分と長い曲ですがだれることは決してありません。

以上がオリジナルですがボーナストラックがあります

6 Variations Of In The Rain (Madlib Remix)
DJのマッドリブの曲。普通のヒップホップのアルバムに収録されていたらいい曲ですがアンコールを求める熱い歓声のあとだと少し場違いな感じがしないでもないです。

さらに2007年にはLP未収録だった3曲が発掘されました。

Let’s Stay Togeher
アルグリーンのカバー。クールな音色のヴァイブとファズを使ったのか音割れしたのかどっちかは分かりませんがザラついた音のオルガンの対比が面白いです。

Betcha By Golly, Wow
スタイリスティックスのカバー。ジャズファンクではスタンダードと言っていい曲ですがオリジナルのメロディとアドリブが程よいバランスでミックスされていています。どの曲もアルバムに収録された曲とクオリティは変わりませんがバラードのカバーだからか熱量が弱めなのでそこら辺が漏れてしまった理由かなと思います。ただもしこの当時からCDがあるか2枚組でリリースできる余裕が有れば収録された気もします。

You Are Everything
スタイリスティックスのカバー。ハロルドの正確なドラミングがかっこいいです。時々かすかに歌声が聴こえてくるのとぎちぎちに音を詰めた演奏ではないので演奏を楽しむための緩いジャムっぽい曲です。