Roland Kirk - Volunteered Slavery (1969)
志願奴隷制というタイトルは時代とカークの言動を思えば社会的なものを感じますが彼の伝記であるローランドカーク伝によれば自分に尽くしすぎる妻に嫌気がさしていた結婚生活を揶揄するものだとか。ただカークはいうことを変えたりはぐらかすような人物だったようなのでこれは真相かは分かりません。個人的にはその両方の意味が込められているように思います。A面はスタジオ録音、B面は1968年のニューポートジャズフェスティバルでのライブ録音です。ライブにしてはちょっと少し短いように思いますが当時のニューポートは超大物でなければだいたい30分程度だったうえにカークは喋りが長い人だったので演奏に関しては収録分が全部だと思われます。
ローランドカーク:テナーサックス、マンゼロ、ストリッチ、クラリネット、フルート、ノーズフルート、ホイッスル、ボーカル
ロンバートン:ピアノ
ヴァーノンマーティン:ベース
スタジオのみ参加
チャールズクロスビー、ソニーブラウン:ドラム
ジョーテキシドール:タンバリン
ディックグリフィン:トロンボーン
チャールズマギー:トランペット
ローランドカークスピリットコーラス:コーラス
ライブのみ参加
ジミーホップス:ドラム
Volunteard Slavery
ゴスペル風のコーラスから始まる曲。カークのホーンにトロンボーンとトランペットが加わった3菅から6菅の熱量の高い演奏が圧巻です。
Spirits Up Above
重厚ななゴスペルボーカルから始まる曲。このボーカルが好きでこの曲だけを聴く時も多いです。後半になってホーンが出てきますが個人的には最後までボーカルメインで聴きたかったです。
My Cherie Amor
スティービーワンダーのカバー。楽しいポップな演奏ですが後半には声入りフルート等カークらしいクセに強さが出てきます。カークほど予想を裏切られたと思ったら途中からはやっぱりいつものって展開が面白い人はいません。
Serch For The Reason Why
カークのオリジナルですがモータウンのカバーみたいなメロディやリズムです。
I Say A Little Prayer
バートバカラックの曲ですがそうとは思えないくらい勢いと熱のこもった演奏です。ホーンセクションもドラムもフリースレスレにスタイルを捨てて勢いを出している中1人モーダルに攻めるピアノもまたいいです。Fly Me To The MoonやNight And DayやA Love Supremeらしきフレーズが飛び出すアドリブに雪崩れ込みもう一度テーマに戻り終わりですが最後まで目が回る展開です。
Roland Kirk Remarks
ここからがB面でMCです。楽器の解説もしています。
One Ton
ほんのりファンキーなアップナンバー。ホーン奏者はカーク1人のはずですが6人くらいいるんじゃないかっていうくらいの音圧です。後半の声出しフルートとノーズフルート(リコーダーのような音です)は少し好き嫌いが分かれそうです。
Ovation &Roland’s Rememaeks
MCと観客の歓声、カーク本人のMCです。
A Tribute To John Coltrene:Lush Life, Afro Blue & Bessie’s Blues
モーダルかつ美しいバラードのLush Lifeからピアノの弾むようなビートが印象的なAfro Blue、フリーキーに歪むBessie’s Bluesを繋げています。
Three For The Festival
コルトレーンメドレーとメドレー形式(おそらくこれだけはオリジナルなので別曲扱いだと思います)のナンバー。カークバンドのフリーさを詰め込んだような曲でカークの声入りフルートはこの時の精神状態が不安になるレベルです。
コネクション:コテコテサウンドマシーン
元祖コテコテデラックスを書いた原田和典さんの本でジャイブからホンカー、ジャズファンク、B級ハードバップ、ソウルジャズ等々広く紹介しています。元祖はディスクガイド、マシーンは読み物的な内容なので両方揃えることをおすすめします。ただ元祖は入手困難なうえプレ値がつけられている場合もあります。でもそれなりの数の図書館に所蔵されているので図書館を当たるのも良いです。なおこれを書いた時の参考文献でもあります。