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渡辺貞夫 - Recital(1976)

渡辺貞夫さんのイーストウィンド(以降EW)での最終作です。CBS及びEWでの一作目のパモジャまでは同時期のジャズファンク、スピリチュアルジャズと共鳴するようなアフリカ志向のモーダルジャズで、この後のフライングディスク時代ではフュージョンとスタイルがガラッと変わりますが、本作ではこの過渡期と言える作品です。メンバーや選曲はいままでの路線を踏襲していますが、モードジャズ由来の重さはなく軽快な響きはフュージョン時代と通ずるものがあります。余談を二つするとEWはジャケ写にミュージシャンの顔を使わずアーティスティックなイラストや写真か風景写真が使われていますがナベサダさんのアルバムは全て本人の写真が使われています。また本作は1976年度芸術祭大賞を受賞しておりジャズ界からの受賞は初だそうです。異論はあるとは思いますが70年代中盤は日本のジャズが最も熱かった時代の一つであることは間違いないはずです。

メンバー
渡辺貞夫:アルトサックス、フルート、ソプラニーノ
峰厚介:テナーサックス、ソプラノサックス
福村博:トロンボーン
本田竹曠:ピアノ
渡辺香津美:ギター
岡田勉:ベース
岡沢章:エレキベース
守新治:ドラム
富樫雅彦:パーカッション

Pastoral
69年の同名のアルバムより。ホーンのアレンジやメロディ等昭和の映画や大河ドラマのテーマのような雰囲気です。オリジナルはフリーの雰囲気も漂う牧歌的な曲でしたがここではスピリチュアルやファンク風のアレンジです。本田さんのパーカッシブなピアノや香津美さんのエレクトリックマイルスにいても不思議ではないギターが印象的です。

Burung Burung
トロンボーンとフルートのスピリチュアルな響きが印象的な一曲。トロンボーンとフルートというのはあまりない組み合わせな気がしますが対照的な音色でとても面白いです。

Hiting Home
軽快なフュージョンナンバー。ナベサダさんよりも本田さんや峰さん、福村さんがいたフュージョングループのネイティブサンに近いサウンドです。

Matahari Terbenam
ホーン隊抜きでの演奏。リリカルなピアノとアフリカンなコンガが印象的です。

Hiro
香津美さんのギターから始まるファンキーなナンバー。ホーン隊も息のそろった音圧高めのパフォーマンスとエネルギッシュなソロで聴いていてテンションが上がります。

Old Photograph
リリカルなピアノとホーンが美しいバラードナンバー。ソプラニーノかソプラノサックスのどちらかと思いますが正直違いが分かってないです。

Wana Tanzania
33秒のインタールード的な曲。実際も繋ぎとしてこの長さだったのか編集で縮めたのかは不明ですがおおらかなファンキーフィーリングが心地よいのでもっと聴きたかったです。このアルバムの曲はほぼ全てナベサダさんのオリジナルですがこれとマライカはアフリカ民謡です。

Maraica
ほんのりレゲエ調のレイドバックしたリズムが心地よい曲。トロンボーンをメインにしたおおらかなホーンや明るく軽やかなタッチのピアノも心地よくて後のフュージョン時代に通ずるものがありますがただ心地よいだけでなく段々とエネルギッシュになっていくのがかっこいいです。

Theme From "My Dear Life"
ナベサダさんのラジオ番組のテーマ。ライブの最後を締めくくるようにしみじみとしたトーンで演奏されます。この番組まだテープがあるなら全ては権利関係で難しいかもしれませんがポッドキャストとかでいつでも聞けるような形で公開してほしいです。