人物・バンド解説番外編「ジャズミュージシャンのお仕事」

今日はジャズミュージシャンが参加したポップスを紹介します。フュージョン系のミュージシャンを入れるとキリがないのと線引きが難しいのでバップやクールジャズ系のミュージシャンでかつスペシャルゲスト的な扱いではなくあくまでもバックバンドの一員的な立ち位置のものに絞りました。(若干例外はあります)個人的に知っていてかつ好きなものを選んだのでこれがない、あれがないは多々あると思いますがお許しください

1.バーニーケッセル
ポールウィナーズで有名な西海岸1のジャズギタリストですがスタジオミュージシャン集団のレッキングクルーとしても活躍していました。一時期フィルスペクターにギターのレッスンをしていたことからフィルや彼の子分で後に女性シンガーのシェールとコンビを組むソニーボノの録音に多々参加しています。しかしソニーの仕事のやり方が気に入らなかったらしく普段は無口なのにソニーの仕事の時だけは皮肉を言うこともあったみたいです。(ソニーは皮肉だとは気づかず言葉通りに受け取ったためスタジオにいる人全員が爆笑したらしいです。フィル関連の本ではソニーは抜けたガッツだけが取り柄の人物として書かれがちですが、物凄いガッツで肉屋の使い走りからミュージシャンになりさらに政治家として著作権関連の法の成立に尽力を尽くした結果功績をたたえてソニーボノ法と名づけられているのでガッツだって馬鹿にならない並外れたものがあるし実は頭の良い方だと思います。)

2フィルウッズ
ウッズはプロデューサーのフィルラモーンと音大の同期だったことからビリージョエルのJust The Way You AreやフィービスノウのNever Lettin’ Goなどラモーンがプロデュースした仕事に時々参加しています。またスティーリーダンのアルバムKaty Lied収録のDoctor Wuも最高です。

3バドシャンク
クールジャズ系のサックス、フルート奏者ですがLA録音のポップスやロックでホーンや笛の音が欲しくなると彼が呼ばれることが多かったようです。個人的にはニックデカロのイタリアングラフィティでのプレイが印象的です。

4レイブラウン
ベーシストとして有名なレイですがホセフェリシアーノやプリシラ(リタクーリッジの姉)、マリアマルダー、JB、スティーリーダン、ビリープレストンなどのアルバムに参加しています。こういった仕事ではあまりジャズ色のないプレイが印象的です。

5ソニーロリンズ
彼はあまりジャズ以外の仕事は多くないですがローリングストーンズのWaiting On A Frendに参加しています。わざわざソニーを呼ばんでもというプレイですが自分も含めあの曲でジャズを意識し始めたロックリスナーは結構いる印象です。実は97年のブリッジトゥバビロンではウェインショーターが参加していますがアルバムそのものの影が薄いせいかあまり話題にはなりません。

6ジミースミス
ジャズ界一のオルガンプレイヤーのジミースミスはクセが強いせいかあまりポップどころかジャズミュージシャンのサイドマンとしての録音も少ないですがなんとマイケルジャクソンのBADに参加しています。タイトル曲の間奏部分2分30秒あたりからハモンドオルガンのまろやかかつファンキーな音がギンギンしたエレキとピラピラしたシンセの間にある束の間の安心です笑

7ロンカーター&リチャードデイヴィス
ロンカーターはフュージョンのアルバムにも参加しているので意外性はないですがエリックドルフィー等前衛よりのアルバムに多く参加するリチャードデイヴィスは少し意外です。リチャードの参加した有名アルバムにはポールサイモンのひとりごとやブルーススプリングスティーンのBorn To Runなどはあります。個人的にポップスやロックのウッドベースの4割はロンカーター、2割リチャードデイヴィス、もう2割レイブラウン、1割チャックドマニコ残りはその他という印象です。

8、マイルスデイヴィスバンド
黄金クインテット〜ビッチェズブルーまでの間にマイルスデイヴィスのバンドにいたウェインショーター、ハービーハンコック、ジョンマクラフリン他にジミヘンのリズムセクションだったミッチミッチェルとビリーコックスが加わった夢のような布陣で録音されたのが当時マイルスと結婚していたベティデイヴィスの幻の一曲。これだけ豪華ですが知名度が低いのはお蔵入りされたから。原因は夫婦仲の悪化でマイルスが会社に圧力をかけたからだとか。発掘版にはベティの元カレのトランペット奏者ヒューマセケラと彼と親しかったジャズクルセイダーズをバックに録音した音源も収録されてます。

9 ジェロームリチャードソン
ローランドカーク、ユセフラティーフに並ぶ3大マルチリード奏者の1人(僕が呼んでるだけでそんなのありません)ですが他2人が自己表現のために様々な楽器を手にしたのに対しジェロームは多くのポップスやロックでジャズっぽいソロを吹いてフレイバーを加えています。

おまけ
 レッキングクルーのリズムセクションで有名なドラマーのハルブレインもベーシスト/ギタリストのキャロルケイも元々はジャズミュージシャンとして活動していたところをスカウトされてスタジオミュージシャンになったという経緯があります。またモータウンの拠点だったデトロイトはケニーバレル、トミーフラナガン、ポールチェンバース、ユセフラティーフなど多くのジャズミュージシャンの出身地であり、モータウンのセッションミュージシャン集団であるファンクブラザーズのキーボード奏者アールヴァンダイクもアマチュア時代はトミーと腕を磨いた仲でありベーシストのジェイムスジェマーソンもジャズのベーシストでした。(彼のエレキベースはウッドベースのような調整がされておりウッドベースの経験のないミュージシャンにはとても弾けるものではなかったそうです。)NYのスタッフやその周辺のミュージシャンもジャズ出身だったりと意外とジャズ経験者は多くいます。
 日本だとサムテイラーやシルオースティンをはじめ日野皓正さん、稲垣次郎さんらがムードミュージックのアルバムを作っています。稲垣次郎さんは大滝詠一さんの録音に参加したほか西城秀樹さんやピンクレディーの音楽監督も務めていたそうですがここら辺は守備範囲外なんで名前すら聞いたことがあるようなないようなって感じです。

参考文献
ケントハートマン著「レッキングクルーのいい仕事」
バーニーの皮肉はこの本で読めます