Nat Adderley. Work Song(1960)
本作は兄であるキャノンボールと共演することが多かったナットアダレイがワンホーンで吹き込んだアルバムです。ありきたりでないギタリストのウェスモンゴメリーを器用したいという希望でウェスの参加が決まった他、ベーシストにチェロを弾かせるなど変わった試みをしている他、ボビーティモンズが酔い潰れたために仕方なくピアノレスで吹き込んだ曲もあるなど少し変則的な構成です。本作の録音は1960年1月25日と27日の2日間。同じ月の26日と28日にウェスモンゴメリーの代表作The Incredible Jazz Guiterの吹き込みが行われています。マラソンセッションや兄弟作とも言える二枚ですがこれは予算節約のためだとか。似たような厳しい財政エピソードはブルーノートにもありますが、マイナーレーベルの経営は涙ぐましい予算節約をしても小マリオ状態というかなりの愛か熱意がなければ続かない状態のなか素晴らしいアルバムを送り出した裏方の方たちにも感謝しないとと思わせられるエピソードです。
メンバー
ナットアダレイ:コルネット
ウェスモンゴメリー:ギター
ボビーティモンズ:ピアノ(1,2,5,6,9)
サムジョーンズ、キーターベッツ(2,4,5,6):ベース、チェロ
パーシーヒース(1,6,9):ベース
ルイヘイズ:ドラム
ナットはサックス奏者キャノンボールアダレイの弟。ウェスはそのキャノンボールがリバーサイド(このレコードの発売元)に紹介したことでレコードデビュー。サムジョーンズはナット、ウェスの両名と共演経験のあるベーシストでパーシーはインクレディブルジャズギターにも参加。ボビーティモンズは兄のレギュラーグループから借りてきたピアニスト。リバーサイドの人脈フル活用のメンツです。
Work Song
ミュートコルネットとベースによるコール&レスポンスで演奏されるテーマがかっこいいです。(ドラムの「ダンッ」という音があることでよりリズミカルのなサウンドになっています)アドリブパートはモダンながらもウェスのギターとボビーのピアノがいることでアーシーなサウンドも持ち合わせています。
Pretty Memory
ナットらしいアーシーなファンキーナンバー。作者はボビーティモンズ。この人の書いたファンキーな曲に外れはありません。
I’ve got a crush on you
美しいバラードナンバーでドラムレスのコルネット、ギター、ピアノという変わった編成です。ナットは決してファンキーなプレイだけの人ではなくこういったバラードではマイルスデイヴィスのような掠れた音でとても美しい演奏をします。同じくバラードが得意なウェスがいることでより美しい演奏になっています。
Mean to me
この曲もバラードナンバーです。やっぱり掠れたコルネットが美しくかつ程よいスウィング感が心地良いです。ウェスもブルージーで美しいギターを弾いています。
Fall Out
アップテンポのファンキーナンバー。全員がソロをとり、全て素晴らしいですが特にボビーティモンズのソロがいいです。
Sack Of Woe
兄ちゃんのオリジナルで兄ちゃんはマーシーマーシーマーシーで演奏しています。ロックビートを使っている訳ではないですがテーマはジャズロックっぽいです。そのテーマではベンタッカーがComin’ home babyで弾いていたようなベースラインがクセになります。ソロはそれぞれの個性の出たスタイルで面白いです。
My Heart Stood Still
イントロの繊細なギターが美しいバラードナンバー。ギターは繊細ですがリズムはほどよくファンキータッチ、コルネットはその中間くらいのスタイルです。
Violets For Your Furs
繊細ながらも暖かみのあるナットのプレイが心に染みます。それに続くウェスもマイルドなタッチで同じく心に染みます。この曲に限らずですが美しいジャズバラードを聴いているとジャズバラードより美しい音楽があるのかと思う時があります。
Scrambled Eggs
バタバタしたドラムがかっこいいハイテンションのファンキーナンバー。
どうでもいい話ですが巨漢で有名な兄ちゃんキャノンボール(芸名はその体型が由来とも大食漢という意味のキャンニバルが由来とも言われています)ほどではないですがブックレットに載った写真を見るとナットも丸い体型です。そして兄弟仲の良かった2人(キャノンがニューヨークに出てすぐとマイルスバンドにいた時を除くとほとんどのアルバムで共演しています。またキャノンボールが亡くなった後ナットはショックのあまり一時期引退します)1万分の1でいいからイギリスの某眉毛兄弟にも見習ってほしいものです笑