Phil Upchurch & Tennyson Stephens. Upchurch / Tennyson (1975)
派手なリードも地味ながらもファンキーなバッキングも弾けてベースも弾ける。ブルース、ロックンロール、ソウル、ジャズなんでも弾けるすご腕ギタリストのフィルアップチャーチがシカゴの友人でキーボード兼シンガーのテニソンと連名でリリースしたアルバムを紹介します。ジョージベンソンのバッドベンソンのレコーディングに参加した際、フィルのプレイに感銘を受けたクリードテイラーがフィルにリーダー作を作らないかとオファーし、それを受けて制作されたのがこのアルバムです。フィルのシカゴ人脈とKUDUのNY人脈がタッグを組んだ上質のジャズファンク、ソウルジャズアルバムです。
メンバー
フィルアップチャーチ:エレキギター、アコギ(2)、ベース
テニソンスティーブンス:アコースティックピアノ、エレピ、ボーカル(1、3、5、7、9)
ボブジェイムズ:エレピ(1、2、6、9)、アープシンセ(6、7、8)
ダグバスコム:エレキベース(4、8)
エリックゲイル:エレベ(2)、エレキギター(6)
スティーブガッド、アンドリュースミス:ドラム
ラルフマクドナルド:コンガ、パーカッション
ヒューバードロウズ:フルート
デイヴィッドサンボーン:アルトサックス
他
フィルとは対照的にテニソンは謎の人です。discogsで調べるとソロアルバムはRheta Hughesという人との連名のものが1枚とこれのみ、初めて参加したアルバムが65年、次が73年と大きな開きがあります。また参加したアルバムのほとんどがシカゴ録音かシカゴ出身者なのでシカゴを中心にツアーバンド(ジェリーバトラーのバンドに一時期いたようです)やしっかりとクレジットが表記されないマイナーレーベルでの録音がメインだったのかもしれません。参加経緯もフィルが会社にテニソンの参加を強く主張し、連名でリリースすることを掛け合ったらしいので実力の割に売れない友人を紹介しようという意図があったはず。
You Got Style
なめらかな演奏とボーカルが心地よいソウルナンバー。フィルのファンキーなベースやソウルフルなデイヴィッドサンボーンのサックスソロも最高です。テニソンのボーカルは有名なシンガーだとダニーハサウェイとディアンジェロの中間といった感じです。
Ave Maria
シューベルトの曲のカバー(CTIだとクラシックのカバーはよくあるけどKUDUだと珍しくかも)ソウルフルなベースとコンガを土台にエレピとアコギが柔らかく響く良カバーです。
In Common
テニソンの書いた曲。ニューソウル的な内省さとゴスペルのような厳かさのある演奏が印象的です。ここで聴けるテニソンのエレピの音はディアンジェロのそれを先取りしたようにも聴こえます。
Tell Me Something Good
スティービーワンダーがルーファスのために書いた曲。クラヴィネットが弾いていたフレーズをフィルがワウギターで、ボーカルフレーズをサックスが忠実になぞっています。サビになるとワウギターがボーカルフレーズを弾きサックスのアドリブが入ります。中盤はジャムでこっちもかっこいいです。ズッシリとしたリズムはほんのりラテンの匂いもする聞きごたえのある重量級ファンクです。
Don’t I Know You
シンセの揺らぎといいボーカルといい、打ち込みっぽいスティーブガッドの4つ打ちのドラムといいネオソウル感が強い曲です。(ネオソウルのミックステープにこれ入れても違和感なさそう)
South side morning
ボブのキーボードとフィルのエレベがかっこいいこの時期のボブジェイムズらしいサウンドのフュージョンナンバー。
Evil
フィルがワウギターを弾きまくるジャズファンクナンバー。ブルーサムからリリースしたアルバムに近いタッチのサウンドです。女性コーラスやサックスがダーティーな感じでかっこいいです。
Black Gold
チャールズステップニーが書いた曲でフィルの持ち歌です。(これを含めて3枚のアルバムで弾いています)E,W&Fをダーティーにしたようなファンクナンバーでスペイシーなシンセとそれに続く長尺のギターアドリブが印象的です。
I wanted too
ビリープレストンっぽいリズミカルでポップなソウルナンバー。サビがちょっと演歌っぽいです。
昨日紹介した笠井紀美子さんのWe Can Fall In Loveに果たしてテニソンとフィルは参加しているのかの検証で聴き始めましたが普通にいい内容だったのでその事を忘れて普通に聴き入ってしまいました笑。2人は参加しているかはテニソンは不明、フィルは多分参加していると思います。