Stan Clarke - Children of forever (1972)
RTFやジョージデューク、上原ひろみ等の著名なミュージシャンと共演し自己名義のアルバムも有名なスタンクラークのファーストアルバムが本作です。デビュー前の彼はロフトジャズやスピリチュアル系の界隈に身を置いていたのでボーカルでアンディベイとディーディーブリッジウォーター濃い2人がボーカルをとっています。アンディベイはホレスシルバーの賛否分かれる人心3部作などで歌っていた人で深みと神々しさがある声です。ディーディーは後にサドメルバンドの一員として来日したファーストアルバムやスタンクラークやジョージデュークのプロデュースでディスコ風のフュージョンを作ったようにクセはないですが高い歌唱力のある人です。さらに後にRTFに加わるレニーホワイトやどういう繋がりがあったのかわからないパットマルティーノなど興味深いメンバーから繰り出される音はRTF本体のような軽やかな音ではなく重量や深みのあるサウンド。フュージョンとスピリチュアルジャズを融合したアルバムとしては最初期の一枚といっていいと思います。ライナーによると録音は1972年の12月26と27日の二日間。50年ほど前の今日作られたアルバムだと思って聴くと感慨深いものがあります。
メンバー
スタンクラーク:ジャズベース、エレキベース
チックコリア:キーボード、プロデュース
パットマルティーノ:ギター
アンディベイ、ディーディーブリッジウォーター:ボーカル(Bass folk songを除く)
アーサーウェブ:フルート
レニーホワイト:ドラム
Children of forever
基本はRTFのあのサウンドですがチックがクラヴィネットも弾いていたりスタンリーのソロということでベースの音が強いためRTFよりファンキーな雰囲気です。そして厳かなボーカルが印象的です。演奏はほとんど変わらないのにボーカルが違うだけでここまで印象が変わるというのは驚きです。
Unexpected days
伸び伸びとしたフルートとディーディーの歌声が美しい曲。1番本家RTFに近いと思うのがこの曲です。
Bass folk song
タイトル通りスタンのベースプレイが最高です。この曲ではウッドベースとエレキベースの両方を弾いているうえにグルーヴィなプレイに始まり弦を引っ張るような音や弓を使って弾いたりワウをかけたりとスタンリーが自身のできることを全て詰め込んだような曲です。パットマルティーノは全曲にクレジットがありますが印象がとても薄く本当にいるの?って曲がほとんどですがここでは12弦ギターと普通のエレキ両方を使っている上に比較的存在感のあるプレイをしています。
Butterfly dreams
チックの端正でリリカルなピアノソロで始まる曲。スピリチュアルな雰囲気の強い新主流派っぽい曲調でスタンの出身がスピリチュアルであることがよくわかる一曲です。フルートやボーカルがスピリチュアル感を、チックのブルーノート時代のハービーハンコックみたいなアコースティックピアノやパットのエフェクターを使わないギターが新主流派感を作っていると思います。
Sea Jorney
16分の大曲で初めのうちはハービーハンコックの処女航海に収録されていても違和感のなさそうなイントロから始まり段々とスピリチュアル感やRTF感が出てきます。長い曲なので聴きどころも多いですが特にワウをかけたウッドベースのアルコのフリーキーなサウンドが面白いです。