人物、バンド解説「キャノンボールアダレイ」
今日はキャノンボールアダレイについて解説とか感想とかをダラダラと書いてみました。明らかな嘘や間違いはありませんが細かい間違いはあるかもしれないので話半分でお願いします。
彼のプロフィール
※アルバム「マーシーマーシーマーシー」の油井正一さんが書いたライナーノーツには彼がアメリカの雑誌でデビュー前について語ったインタビューが引用されているのでそれを参考文献にしています。中には日本の情報と異なるものもありますが本人が語っているので信憑性は高いと思います。
プロになるまで
キャノンボールアダレイは1928年生まれ(生きていたら94歳!)でキャノンボールはもちろん愛称で本名はジュリアンと言います(シェイクスピアの劇に出てきそうな名前です。いるかは知らんけど)この愛称は丸く太った体型が砲弾に似ていたからとか大食漢という意味のキャンニバルが訛ったとかキャンニバルは人食いという意味もあるからレコード会社の真面目なお偉いさんが眉をひそめないように語感が似ているキャノンボールに変えたとか言われていて実際のところは分かりません。3歳下の弟ナット(ナサニエル)はコルネット奏者です。
彼は初めからプロのミュージシャンとして活動したわけではなく1948年から1954年まで地元の高校で音楽教師をする傍らアマチュアミュージシャンとして活躍していました(うち50年から53年は徴兵されて軍隊で勤務。54年はランクアップのため大学で勉強)その後ライオネルハンプトンのバンドに入ったナットにプロになるように誘われたり(この時はキャノンボールの妻の反対で流れたようです)いろいろあってからNYでベーシストのオスカーペティフォードのグループに飛び入り参加してプロの道へ進みました。
デビュー後
オスカーペティフォードのグループを辞めた後はナットとグループを組みエマーシーと契約するも上手くいかず解散。その後マイルスのバンドに加入したのは有名な話です。マイルスバンド脱退後はもう一度ナットとグループを結成し、ボビーティモンズ作曲のダットデアのヒットで人気グループの仲間入りを果たし、ジョーザヴィヌル、ルイスヘイズ、サムジョーンズのリズム隊を迎えたくらいがファンキーなハードバッパーとしてのキャノンボールの黄金期かなと思います。(特に3菅時代が好きです。)2菅に戻ってリズム隊が変わったくらいから電気楽器の導入、ソウルジャズへの接近、企画盤のリリースなど面白いスタイルのアルバムを制作しますが王道のジャズが好きな人からはそっぽを向かれてしまいます。鍵盤がジョーからジョージデュークに交代したあたりから音楽性がジャズファンク〜フュージョン路線になってお堅い評論家からの評価が地に堕ちてしまいこの頃のアルバムも再発が少なく入手が難しくなります。とは言え並のジャズファンクやフュージョンのミュージシャンよりキレた演奏が聴けるし過小評価にもほどがあると思うのですが…。1975年持病の悪化で永眠。47歳という若さでした。ナットはショックのあまり1年間引退して引きこもってしまいますが友人のサポートで復帰。復帰後の作品も悪くないですがあまり取り上げられることもなくこちらも過小評価すぎるのではと思います。ナットは2000年に68歳で亡くなっています。
キャノンボールのここがすごい
キャノンボールのすごさはいろいろありますが大きく分けると①プレイスタイル、②新人発掘のセンス、③ライブの時のMCの3つだと思っています。
①プレイスタイル
キャノンボールのプレイスタイルはデビュー当時パーカーの再来と言われたようにバップ的なアドリブセンスが特徴でした。しかしバラードのテーマ演奏の歌うようなフレーズや中期のファンキーナンバーでの時にはおおらかなテーマや時には躍動感溢れるアドリブスタイルといったように単にアドリブがすごいバッパーというだけではなくエモーショナルで器用な面を持ち合わせています。またマイルスデイヴィスやビルエヴァンス、ナンシーウィルソンといった共演相手にスタイルを寄せるカメレオン的なところもまた良きです。ただ本人はチャーリーパーカーよりも同じフロリダ出身のアルクーパー(ロックミュージシャンのあの人とは別人です)というサックス奏者の影響を受けていて時々彼のフレーズをそのまま真似していたらしいです。
②新人発掘のセンス
キャノンボールの新人を見抜く力はすごかったようでリバーサイドやマイルストーンのプロデュースだったオリンキープニュースがウェスモンゴメリーをスカウトしたとき「キャノンボールの推薦だから」と言って演奏を聴かずに契約したというのは有名な話です。他にも61年から70年までの9年間というジャズ界では異例の長期間キャノンボールのバンドにいたジョーザヴィヌルとは単にバンドリーダーとサイドマンというだけではなく家族ぐるみで付き合う良き友人であり尊敬する師でもあったようです。(ジョー曰くジョーの子供に自転車をプレゼントしてくれたらしいです。)
キャノンボールのバンド参加後に売れたミュージシャンにはジョーの他にも
ユセフラティーフ(reeds)
チャールズロイド(sax)
ボビーティモンズ(p)
ジョージデューク(key)
サムジョーンズ(b)
ルイスヘイズ(ds)
などがいます。
③ライブの時のMC
ジャズミュージシャンのMCというとミュージシャンの紹介や曲紹介といった必要最低限のことしか話さないイメージですがネイティブじゃなくても聞き取れるくらいゆったりかつ滑舌の良い喋り方で時に冗談を混じえた楽しい内容が特徴的です。
ディスコグラフィー
これに関しては膨大な量があるので僕が好きなもの・気になっているものに絞って紹介します。(個人的なメモレベルです。)おまけで参加作やナットのも同じような感じで紹介します。わからないけど大体の固定化されたグループはリーダー抜きの作品とかフロントマンだけ別のもあったりしそうでそこら辺も掘ってみたいけどあるかはよくわかりません
リーダー作
「サムシンエルス」1958ブルーノート
実質マイルスのやつって言われてる一枚。確かにマイルスの存在感すごいけどキャノンボールだって頑張ってる。マイルス=キャノンボール双頭バンドが適切な気がします
「シングスアーゲッティングベター」1958リバーサイド
ミルトジャクソンとの共演盤。聴かずともブルージーでリラックスした音が想像できるよね
「キャノンボールアダレイクインテットインシカゴ」1959マーキュリー
トレーンとの共演盤。これとサムシンエルスはハードバッパーとしてキレキレのアドリブを吹きまくるキャノンボールが聴きたいなら抑えるべき二枚です
「キャノンボールアダレイインサンフランシスコ」1959リバーサイド
ファンキーナンバーのダットデア収録。キャノンボール=ファンキーはここから始まったと言っても過言ではないです。
「ゼムダーティーブルース」1960リバーサイド
ワークソング収録。ファンキー好きは必聴。
「キャノンボールアダレイアンドザポールウィナーズ」
ダウンビート、メトロノーム、プレイボーイの3つの雑誌の楽器別人気投票で一位になった人を集めた企画盤で主要メンバーはキャノンボール、ウェスモンゴメリー、レイブラウン。ブルースを期待するメンバーです。
「ノウホワットアイミーン?」1961リバーサイド
ビルエヴァンス、MJQのリズム隊との共演盤。ビルとキャノンボールという2人が会うとどんな音になるのかとても気になります。
「キャノンボールアダレイセクステットインニューヨーク」1961リバーサイド
奇才ユセフラティーフ、オーストリア史上1番ファンキーな男ジョーザヴィヌル初参加。キャノンボールはライブが1番!
「ナンシーウィルソン&キャノンボールアダレイ」1961キャピトル
メジャーデビュー後初のキャノンボールによるボーカルの伴奏もの。ナンシーのR&B由来の威勢のいいボーカルとの相性抜群です。
「キャノンボールズボサノヴァ」1962リバーサイド
キャノンボールがブラジルでセルメンと共演!ナット作のジャイブサンバ収録
「ニッポンソウル」1963リバーサイド
ユセフラティーフといつメンを連れて来日。ファンキーな曲もユセフの前衛的な曲もライブらしい熱気で最高!浮世絵風のジャケットも好きです。
「ドミネイション」1965キャピトル
オリバーネルソン式のバンドをバックにした一枚。オリバーが指揮、アレンジした音が好きなのでとても気になる一枚です
「マーシーマーシーマーシー」1966キャピトル
キャノンボールが電気楽器と初共演。ファンキーなタイトルトラックは必聴!
「ホワイアムアイトリーティッドソーバッド」1967キャピトル
ファンキーが嫌いな人はとことん嫌で好きな人にはたまらないいつものあの音。タイトルトラックはステイプルシンガーズのカバーです。
「カントリープリチャー」1969キャピトル
マーシーマーシーマーシーのパート2のようなタイトルトラックしか聴いたことないですがきっとファンキーな一枚です
「ラブセックスアンドザゾディアック」1974年(録音は1970)キャピトル
フュージョンよりのエレクトリックサウンドにのってDJが愛やセックスについて語る異色盤。フュージョンファンやレアグルーヴファン向けです。
「ラジオナイツ」1991年ナイト
1967年のライブ音源でチャールズロイドが参加。近年は入手困難なのが残念。
参加先
ミルトジャクソン「プレンティプレンティソウル」1957アトランティック
A面はクインシージョーンズ編曲のバンドでピアノでホレスシルバー、ドラムでアートブレイキー参加。B面はクインテット編成の渋いブルースセッション。できればミルト、キャノンボール、クインシーで丸々一枚作って欲しかったです
マイルスデイヴィス「カインドオブブルー」1960 CBS
正直いうと最近はあまり聴いていないのでキャノンボールがどんなプレイをしてるかは分かりませんがこれの吹き込みに参加しただけでも充分すごい!(感想がバカ)
レッタムブール(ンブール)ナチュラリー1972ファンタジー
南アフリカ出身の歌手が西海岸で録音した一枚。クルセイダーズのメンバーを中心にデヴィッドTウォーカーやアーサーアダムスが参加。アダレイ兄弟はスペシャルゲストとして参加。欲しいけど高そう
ナット編
「ワークソング」1960リバーサイド
にいちゃんに提供したワークソング収録。アップテンポではファンキーにバラードではマイルスが乗り移ったようなリリカルなナットのプレイが聴けます。
「インザバッグ」1962 ジャズランド
にいちゃんとNOのミュージシャンと共演したアルバム。ファンキージャズとニューオリンズ音楽の融合は気になる一枚。ドクタージョン曰くアダレイ兄弟のNO訪問はNOのミュージシャンシーンにおおきな影響を及ぼしたそうです。
「エレクトリックイール」A&M CTI 1969
ナットがジョーザヴィヌル、ロンカーター、グラディテイトとオーケストラをバックに電化コルネットに挑戦。ファンキーというよりはロッキンな一枚。
また加筆訂正すると思います。