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Nat Addeley - You,Baby

エディハリスに引き続き今日も電化ホーンを紹介します。作品としてはCTIでは珍しいジョーザヴィヌルの参加が特色です。ジョーザヴィヌルの伝記によるとこの頃のキャノンボールアダレイのバンドは南部気質でハードバップをやり続けたいナットと新たな楽器や動向に関心を示してバンドにそれらを持ち込むジョーの仲が悪くキャノンボールが間を取り持つという状況だったそうです。なのになぜジョーを連れてきたのか謎なうえにアレンジャーには当時ジョーと親しかったビルフィッシャーを起用しています。彼は元々R&B系のサックス奏者でレイチャールズの初のニューオーリンズ録音にも参加しています。しかしなぜか前衛音楽に感化され当時はジャズでもクラシックでもない第3の音楽を探求していました。なのでストリングスはチェロとヴィオラを基本にした甘さ控えめのアレンジに合わせてナットの電化トランペットが乗るシンプルなようで中々にクセのある一枚です。

メンバー
ナットアダレイ:コルネット
ジョーザヴィヌル:ピアノ
ロンカーター:ベース
グラディテイト:ドラム
ジェロームリチャードソン:フルート、アルト、ソプラノサックス

You Baby
チェロとフルートによるダークでミステリアスなオーケストラをバックにエレクトリックコルネットがソウルジャズ風のメロディを奏でる一曲。

By The Time I Get To Phoenix
ジミーウェッブの曲でハスキーなエレキコルネットが美しいメロディを奏でます。

Electric Eel
ナットのオリジナル。電化らしい濁ったサウンドとファンキーなエレピが印象的です。

Early Chanson
ジョーザヴィヌルの作品。ヨーロッパ的な気品あふれるクラシック調のバラードナンバーでナットのマイルスに勝るとも劣らないミュートサウンドの美しさを引き立てています。

Denise
軽快なボサノヴァタッチの一曲。エレキコルネットを使っていますがミュートサウンドだと生音とあまり変わらないです。

Early Minor
ジョーザヴィヌルの曲。ミュートコルネットとウィリアムフィッシャーのアレンジが美しくマイルスとギルエヴァンスの共作を思い起こさせますと岩浪洋三さんがライナーに書いています。岩浪洋三さんのライナーは簡潔ながらも的を得ていて聴きながら読むとより楽しくなります。

My Son
ほんのりアフリカンな雄大なサウンドのバラードナンバー。みじかいながらもリズミカルなピアノソロもよいです。

New Orleans
ブーガルー調のソウルジャズナンバー。録音やミックスが静かでこじんまりとしたサウンドですが兄さんのアルトを加えてキャピタルからリリースしたらもっと豪快かつファンキーでかっこよくなったのではと思います。

Hang On In
8ビートの美しいバラードナンバー。

Halftime
アダレイ兄弟の共作でオリジナルは民謡で立教大学の校歌と元ネタが同じだそうです。(僕のnoteは岩浪さんの博識に支えられているといっても過言ではありません)スウィングとマーチングを融合させた軽快なリズムがかっこいいです。


本作でナットアダレイはセルマー社の電化コルネットを使用しています。クラークテリーやドンエリスも同様の装置をトランペットで使用していますがどちらも構造は同じなので全く同じ装置を使っていると思われます。電化トランペットもヴァリトーンと紹介しているサイトもあり軽飛行機は全てセスナ、原付きは全部ホンダ的な誤解なのか管楽器を電化する装置一式をヴァリトーンというのかわからないです。マイルスデイヴィスや近藤等則さんは全く違うシステムを使っているようです。マイルスは単にエレキトランペットとしか解説されていないですが近藤さんはオリジナルの魔改造エレキシステムを使っているそうです最近ニッチな話題に興味を示していろいろ調べても分からず書きかけが溜まっている今、調べるためだけに興味のないジャンルの高いレコードや読めもしない高い洋書を買い出さないか我ながら心配です。