Billy Preston - KIDs & Me (1974)
5人目のビートルズとも呼ばれるビリープレストン。しかし彼の功績は単にビートルズのセッションに参加したりストーンズのツアーに参加したキーボード奏者という添え物的なものにとどまりません。彼がソウルのキーボードの革新に及ぼした影響は大きく特に69年から71年の彼のキーボードのチョイスや楽曲への持ち込み方は後に革新をもたらしたスティービーワンダーがわずかばかりに興味を示し、ジョージデュークがジョーザヴィヌルのそれを引き継いでいたにすぎない時代にそのはるか先に行っていたうえにジョーザヴィヌルやハービーハンコックは前衛的な部分でオルガンやエレピをおそるおそるフリーキーに鳴らしていたにすぎない時代にすでにそれらを使いこなしていた(ように思わせていた)のだから過小評価にもほどがあるといってよいでしょう。冒頭で否定的に触れてしまったロックとのかかわりも70年代前半のジャンルにとらわれない音楽の開拓をいち早く行った一人であるといえるし、ジョンソン兄弟やボビーワトソン、トニーメイデンといったミュージシャンを発掘したのもこの頃です。本作リリースの74年になると周囲のキーボード奏者の躍進によりその革新性は相対的に失われていったもののゴスペル由来のバラードとスペーシーなファンク、少しばかりのロックという彼の持ち味が十分に発揮された一枚になっています。
メンバー
ビリープレストン:キーボード、ボーカル、プロデュース
ケネス(ケン)ラッパー、ヒューバードハード:キーボード
ボビーワトソン:ベース
トニーメイデン:ギター
ジョーウォルシュ:スライドギター
マヌエルケロー:ドラム
クレジットはないものの複数のサイトでデイヴィッドTウォーカーが参加しているという説があります。またDiscogsではブラザーズジョンソンの兄でギターのジョージが記載されておりもし仮にこれが正しいのであればルイスも参加しているかもしれませんがそれらしいスラップベースは聞こえませんのでいないと思います。ただしジョージはビリーと曲を書いているので交流があったのは間違いなさそうです。
Tell Me You Need My Loving
初期のロックンロールやブギウギ風のリズムのソウルナンバー。曲中でタイトルを歌うときのメロディが60年代に発表したBilly's Bagという曲によく似ています。
Nothing From Nothing
ビリーらしい軽やかでありながらもゴスペルフィーリングを感じるポップなバラードナンバー。
Struttin'
スペーシーなアナログシンセが面白いインストのファンクナンバー。
Sister Sugar
ファンキーなホーンリフがかっこいいソウルナンバー。
Sad Sad Song
キャノンボールアダレイのマーシーとオーティスレディングのファファファをミックスしたような古いタイプのファンキーなノリのソウルナンバー。
You Are So Beautiful
ビリーの代表曲です。ダニーハサウェイやカントリーをやっていた頃のレイチャールズを思わせる美しいストリングスとスケールの大きい歌唱が印象的なバラードナンバーです。
Sometimes I Love You
弾むようなドラムがかっこいいビリーらしい曲調のソウルナンバー。
St. Elmo
アコピ、オルガン、シンセ、クラヴィネットの絡みがファンキーなインストナンバー。
John The baptist
ゴスペルフィーリングの強いファンキーなミディアムナンバー。フルートを模したようなアナログシンセが面白いです。
Little Black Boy And Girls
歌詞、サウンドともに一番ニューソウルらしい曲。子供たちを慰め、鼓舞する歌詞がビリーの優しい人柄が伝わってきます。またギターはデヴィTではないでしょうか?
Creature Feature
強力なグルーブとSFチックなシンセやトークボックスの組合せがかっこいいファンクナンバー。個人的にはこのアルバムで一番好きな曲です。