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Wynton Kelly - It’s All Right! (1965)
ウィントンケリーというとハードバップを代表するピアニストでリーダーとしてはもちろんサイドマンとしても多くの作品に参加しました。彼の特徴はよくスウィングしブルースやソウルのフィーリングに溢れた音色、優れたアドリブがありまた、主役をたてるバッキングができるためサイドマンとしても重宝されたのでしょう。このアルバムではそんなケリーの明るい面を強調した演奏で、メンバーにマイルスデイヴィスのリズムセクションに同じくスウィンギーかつブルージーでバッキングがうまいケニーバレルと陽気なジャズには欠かせないパーカッションが加わった編成。ケリーが好きな人よりもスリーサウンズやラムゼイルイス、レスマッキャンのような高度なアドリブよりノリ重視のピアノトリオが好きな人の方が気にいると思います。
メンバー
ウィントンケリー:ピアノ
ケニーバレル:ギター
ポールチェンバース:ベース
ジミーコブ:ベース
キャンディド:コンガ、ドラム
トミーレイカリブスティールバンド:スティールパン(6)
It’s All Right
カーティスメイフィールドが書いた曲でスリーサウンズかラムゼイルイスのようにスウィンギーかつソウルフルにメロディを弾いています。ケニーのリズムギターも良いです。
South Seas
キャンディドのコンガ入りのラテンナンバー。エキゾチックなテーマやスウィンギーにコロコロ転がるようなアドリブが印象的です。
Not A Tear
ブルージーなバラードで始まり途中からコンガが加わり明るいラテンになります。
Portrait Of Jenny
ケリーらしいリリカルなバラードナンバー。ギターとコンガが入っていないので他のケリーのソロアルバムと似たようなサウンドです。
Kelly Roll
ケニーの曲でファンキーなピアノにソウルフルなギター、元気いっぱいのコンガと聴いているだけで楽しくなってきます。
Fall Of Love
ゲストにスティールバンドを迎えたトリニダードの音楽やサンバのリズムを取り入れたノリの良い曲です。メンバー全員スティールパンを演奏するバンドらしいですがスティールパンの音はあまりせず普通のドラムの音が大きいのがちょっと謎です。
Moving Up
ケリーが一息で思い切り演奏したような勢いあるタッチがかっこいいアップテンポの曲。続くケニーは初めは一息つけよと言いたげにゆったりしているもののケリーに感化されたのか結局弾きまくっています。
On The Trail
ピアノとギターが2人のどちらがバッキングとメロディを弾いているのかわかりにくいテーマのアレンジが面白い曲。ソロも鮮やかかつスウィンギーで楽しいです。
Escapade
ハメを外すという意味のタイトルを持つ曲でタイトルの割にはおとなしめですが明るいブルース調のナンバーです
One For Joan
CD化で追加された曲でラテン調の曲でグリグリと弾くケニーのプレイが楽しいです。
コネクション:ジャマイカ出身
ケリーはアメリカではなくジャマイカ出身です。実はジャマイカ産まれアメリカ育ちの人物は多くて例えば同じピアノ奏者でミルトジャクソンとの共演が有名なモンティアレキサンダー、トランペット奏者のディジーリース、プレステッジをソウルジャズの名門にしたかと思えば優れたバップやエリックドルフィーのような前衛派を手がけ、ブルーノート一筋だったルードナルドソンをカデット(アーゴ)に引き抜いた名プロデューサーのエズモンドエドワーズ。(彼についてはいつか詳しく解説したいです)ジャズ以外だとフィリーソウルの作曲家兼プロデューサーのトムベルやブレイクビーツを発明したと言われるDJのクールハークなどがいます。