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渡辺貞夫 Meets Inter-African Theatre Group - Kenya Ya Africa (1973)

数多いナベサダさんのアルバムの中でも特に異色の一枚が本作。共演者であるInter-African Theatre Group(以下シアターグループ)はケニヤの民俗舞踊グループで元々は芸大と舞踊団の人が結成したそうですが、来日時のメンバーは普段は社会人や学生だったそうです。日本の芸能山城組みたいです。録音はホールのステージで実際に踊りながら行われ、前半がシアターグループのみで後半は共演、最後の一曲のみナベサダさんグループのみの演奏となっています。アフリカ志向のジャズというとパーカッションの効いたファンキーなグルーヴとドロッとしたモーダルな演奏というのがよくあるものですが本作はカラッとした風通しのよい演奏です。というようにとても充実した一枚ですが配信はおろかCD化すらされずDiscogsによると78年に再発されたきりのようです。かなり希少な一枚ですが当時の定価で売られているのを買ったところ滅多にないものですよと言われたので見つけたら多少予算オーバーでも買うのがいいかもしれません。

メンバー
渡辺貞夫:アルトサックス、ソプラノサックス、フルート
渡辺文男:ドラム
鈴木良雄:ベース、エレべ
本田竹曠:ピアノ
Inter-African Theatre Group

Poem
ホール後ろからステージに駆け上がると酋長の偉大であったかを語ります。足音の生々しさはステージならではといえそうです

Kamsabela Kinge
タンザニア地方の歌で一緒に村祭りに行こうという内容だそうです。

Mwana Mberi
ここで太鼓の音が入り一気に音楽らしくなります。とある部族の祝い歌だそうですがそういった情報をしらずとも祝いの雰囲気を感じ取ることができます。

1st Movement
伝統舞踊を基にした創作舞踊。解説によると男性だけの力強い踊りとのことですが音だけでは分からないところもあるので映像が発掘されることを期待したいです。

Khina Lwango Lelo
祝いの歌で女性コーラスの明るい声からも伝わってきます。

Ndobio
祭りの際の歌でここでは前後の曲の繋ぎとして披露されます

Lona Masola
戦闘歌でステージでは客席目掛けて槍を突き出していたそうです。

Kenya Ya Africa
ここからナベサダグループが加わります。電化されたジャズとシアターグループの掛け声が互いを盛り上げていきます。これは求婚の踊りだそうです

Pembe Za Watanabe
両グループの即興演奏でタイトルは渡辺のホーンという意味でシアターグループのリーダーであるジョージメノエが付けたそうです。モーダルながらも村祭りの歌に通ずる明るさや躍動感がありとてもかっこいいです。また鈴木さんのファンキーなベースラインや本田さんのフリーキーなエレピも印象的です。

Makanju
村の争いの歌。といっても実際に戦うわけではなく村同士が代表選手を送り村自慢をした後、踊り比べるというもののようです。女性コーラスとともにナベサダさんのフルートが踊りをはやしたてます。エレピやドラムセットも違和感なく溶け込んでいます。

Harambee
スワヒリ語で共に集まろうといった意味でケニヤ建国時にスローガンとして掲げられた言葉でアメリカの民謡であるリパブリック讃歌のメロディにスワヒリ語の新たな歌詞が付けられています。明るくキャッチーな演奏でライブでも度々演奏されています。

Shosholoza
ケニヤの送迎の歌で最後にこの歌を歌いながら退場していたそうです。重たいベースとまろやかなソプラノサックス(ソプラニーノ?)の響きが印象的です。

Mbali Africa
遥かなるアフリカという意味のタイトルでファンキーなリズムと壮大なフルートが印象的です。

コネクション:Harambee
オリジナルはダウディカバカという人物でHarambee Harambeeが正式名称。ケニヤのベンガというスタイルの楽曲でカラッとした無骨なギターと朴訥とした声が印象的です。スタイルは全く違いますがフィーリング的にはカラッとしたカントリーブルースにも通ずるものがあって好きです。