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The Wes Montgomery Trio - S,T(1959)

ウェスの記念すべき初アルバムです。この時ウェスは36歳。一応ライオネルハンプトンやモンゴメリーブラザーズ、マスターサウンズ(どちらもウェスの兄弟が結成したMJQやジョージ・シアリングクインテットっぽいグループ)等で録音は経験済みとは言えとても遅いです。たまたまウェスの演奏を聞いたキャノンボールアダレイと彼を信じたオリンキープニュースには感想しかありません。(ウェスに対し契約を持ちかけた際、ウェスはまだ演奏を聴いていないのにと驚きますがそれに対してキャノンボールが推薦してくれたからと返したそうです。)後の一流のジャズミュージシャンとのスリリングで高度なテクニックが詰まった演奏、ストリングスやホーンセクションを迎えたゴージャスな演奏ではなくアマチュア時代のアフターアワーズをそのまま録音したような黄昏たブルース感の濃い演奏です。
 ちなみに僕が持っているのは70年代に再発された日本盤で帯には本邦初リリースの文字が。こんないいアルバムが15年も未発売だったというのはちょっと信じられないですね。

メンバー
ウェスモンゴメリー:ギター
メルライン:オルガン
ポールパーカー:ドラム
この時のギターですがウェスの私物ではなくケニーバレルから借りたギターを使っていたようです。

‘Round Midnight
セロニアスモンクの曲のカバーです。静かでブルー。それでいて雰囲気を壊さない程度にテクニックを挟む演奏がとても印象的です。オルガンとドラムは小さい音量でバッキングに徹していてほぼギターソロのような演奏です。個人的にはマイルスのアルバム「’Round About Midnight」に収められている演奏の次に好きな演奏です。

Yesterdays
有名なスタンダードナンバーです。オルガンはフットベースを使うベースのみの演奏でギターはアコギかなという小さい音色から段々と音を大きくしていき箱らしい響きになっていきます。ここでもバラードの雰囲気を壊さない控えめながらも自由なソロを弾いています。

The End Of A Love Affair
この曲で初めてバッキング2人もギターと対等に演奏しています。ウェスのソロもいままでは曲の雰囲気を壊さないものでしたがここでは思う存分弾きまくっています。そしてメルラインもソロを弾いています。ウェスのリズムギターや合いの手にかき消されるくらいあっさりしたソロですが長くウェスと付き合う名脇役の彼らしい演奏です。

Whsper Not
ベニーゴルソン作。穏やかながらもここぞという時に大きい音で決める演奏がかっこいいブルースナンバーです。ここでのオルガンソロは穏やかではありますがブルースらしいコクのあるソロでウェスのアルバムだからと遠慮したのに対してもっとやっていいんだぞと言われてそれじゃ遠慮なくとやったような印象を受けます。

Ecorah
ホレスシルバー作。元気のいいブルースナンバーで引っかかるようなソロや繰り返しなどいつもよりブルースらしい演奏です。オルガンも曲が進むごとにキレが良くなっていきます。最後には短いながらもどっしりとしたドラムソロが入ります。

Satin Doll
ビリーストレイホーンとデュークエリントンの共作。キレのいいドラムをバッキングに箱のギターらしい少しこもったような音のギターとオルガンが対等にテーマとソロを分けあっています。

Missile Blues
ウェスのオリジナルで曲名はウェスが地元インディアナポリスにいた頃演奏していたクラブの一つミサイルルームから。演奏して温まってきたのかスタジオに慣れてリラックスしたのか曲を追うごとにドラムのキレが良くなりオルガンも自己主張が激しくなっていきます。そして相変わらずキレキレのウェス。この三者のぶつかりあいや息のあった演奏がとてもかっこいいです。

Too Late Now
バートンレイン作。アルバム前半のような落ち着いたトーンのバラードナンバーですが段々と盛り上がっていき最後はかっこいい派手なドラミングで終わります。ライナーには全ての曲にはこれはAA’BA’形式で32小節でとか書いてありますが小学校時代音符を覚えられなかったうえに中学校時代100点満点の音楽のテストで8点を取るくらい音楽理論が苦手な僕にはなんのことだかわからないし調べても意味がわからなかったです。でも曲の美しさやグルーヴは十分分かるので気にしません。

Jingles
ウェスのオリジナル。ファンキーなタッチのブルースナンバーでスウィンギーに抑えていたのに我慢できなくなったのか途中から派手になるドラムがかっこいいです。