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Phoebe Snow - S,T(1974)

フィービスノウのファーストアルバムです。リリース元はレオンラッセルが設立したシェルターですがスワンプの匂いはほとんどせずジャズとブルース、フォークを融合した素朴ながらも美しいサウンドです。参加ミュージシャンは詳しくは後述しますが興味深い人々が集まっています。ちなみにアルバムジャケットですが日本版のみ左下にゴールデンゲートブリッジの写真がコラージュされています。

メンバー
フィービスノウ:ボーカル、アコースティックギター
デイヴィッドブロムバーグ:ドブロギター(4)
テディウィルソン:ピアノ(2)
ボブジェイムズ:オルガン(2,3,6,7,8)
ズートシムズ:テナーサックス(2,3,8)
スティーブバウ(1,6,9)、デイブメイソン(9):エレキギター
ヒューマクドナルド:エレキベース(1,6,9)
チャックドマニコ(2,3,7,8)、チャックイスラエル(5):ウッドベース
スティーブモズレー:ドラム(1,2,9)、パーカッション(8)
ラルフマクドナルド:パーカッション(2,3,7)
パースエーションズ:コーラス(1)
マーガレットロス:ハープ(3,7)

 ボブジェイムズはCTIでのファーストアルバムがヒットする直前の参加。ライナーではかなり前衛的な活動をした人として紹介されています。テディウィルソンは40年代、ズートシムズは50年代、チャックイスラエルは60年代、ボブは70年代とジャズシーンで活躍したミュージシャンがそろって居るのが興味深いです。デビューからこのくらいまでのボブに関してはこちらの記事で解説しているので合わせて読んでいただけると嬉しいです。

Good TImes
サムクックのカバーですがデルタブルースにアレンジしています。コーラスはパースエーションズ。フランクザッパに認められデビューしパットメセニーやマイケルブレッカーとともにジョニミッチェルのバックバンドとしてコーラスを担当した異色のソウルグループです。

Harpo's Blues
気だるいフォークナンバー。サックスはズートシムズ、ピアノはテディウィルソンとジャズ界のスターが参加しています。

Poetry Man
ほのかに暖かくも切ないSSWナンバー。フィービの個性が一番出た一曲です。ここでもズートシムズが柔らかいサックスソロを取っています。

Either Or Both
ドブロギターとアコギの絡みが美しい洗練されたフォークナンバー。

San Francisco Bay Blues
ジェシーフラーの曲で多くのミュージシャンがカバーしています。ここではビルエヴァンストリオでの活動が有名なチャックイスラエルのウッドベースだけをバックに弾き語っています。彼女の歌い方ってとてもいいのですがどういいのか上手く言い表せないんですよね。

I Don't Want The Night End
ストリングスをバックにほんのりジャジーなブルースフレーズをエレキギターが奏でるバラードナンバー。こう書くと他の曲とかなり違った印象を受けるかもしれませんが統一感を損ねずアクセントになっています。歌詞ではチャーリーパーカーが亡くなった日の事を歌っていますがバードの事ではなくフィービがデビュー前に彼女の才能を評価し面倒を見ていた別の人物の事だとおもわれます。

Take Your Children Home
ラテン調の軽いビートを用いたフォークナンバー。さり気ないボブジェイムズのオルガンが印象的です。

It Must Be Sunday
繊細ながらもリズミカルなアコギとソフトなサックスの絡みが美しいバラードナンバー。

No Show Tonight
デイブメイソンがギターで参加したロック調の一曲。上手くいかない恋愛を歌った歌詞ですが彼女の書く恋愛の歌詞はどれも上手くいかなかったりどこか気だるさを感じてとても好きです。

おまけ:フィービ本作を語る
フィービは1978年のAgainst the Grain 発表にあわせたインタビューで本作収録のPoetry Manについて語っています。英版wikiに抜粋されているので要約するとジャズっぽすぎた。この路線で何枚も録音しているうちに本当はロックンロールシンガーなのにサラヴォーンやエラフィッツジェラルドの物まねをしている気分になった。ジャズ風の曲を演奏して満足したことは一度もないとかなり厳しい評価を下しています。またPoetry Manに関して世の中ではジャクソンブラウンのことと噂されているけどそうではなく一般人。あの頃は愚かだったから不倫をロマンチックに歌ってしまったが今は頭がおかしくなるとこれまた厳しい評価です。しかしAgainst the Grainに関してもプロデューサーからスタジオの清掃員まであらゆる人物が口出しして思うようにいかなかったとこれまた厳しい評価。続くRock Awayもほんとはロックンロール歌手という彼女の発言通りロック色が強いですがこれも厳しい評価を下しています。完璧主義で自分に厳しい人だったことが感じ取れます。