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Helen Merrill. Helen Merrill with Clifford Brown (1955)

ヘレンメリルは40年代から活躍していましたが本作で一躍人気を集めます。一方のクリフォードブラウンはこの年マックスローチとのクインテットを結成し、ヘレン以外にもダイナワシントン、サラヴォーンといったジャズシンガーとのセッションも行なっています。アレンジャーを務めたのはあのクインシージョーンズですがこの頃やっと一流ミュージシャンの仕事を手掛け始めた頃です。録音がされた1954年ヘレンが25歳、クリフォードが24歳、クインシーが21歳。みんな20代なのにここまで完成度が高いことに驚くと同時にジャズにも若い頃があったと思うと不思議な気持ちになります。個人的にはいかにも吹き込み中な写真と淡い水色のジャケットが好きですがヘレン本人はあまり気に入っていないらしいです。

メンバー
ヘレンメリル:ボーカル
クリフォードブラウン:トランペット
ジミージョーンズ:ピアノ
バリーガルブレイス:ギター
ミルトヒントン:ベース
オスカーペティフォード:ベース、チェロ
オシージョンソン:ドラム
ボビードナルドソン
ダニーバンク:フルート、サックス
クインシージョーンズ:アレンジ、指揮

このアルバムは一曲目が‘S wonderfulでラストがDon’t explainのものと2つが逆になっているものがあります。Don’t explainが頭なのがメジャーなようですが僕の持っているのは‘S wonderfulが最初に来ているのでその順番で紹介します。

‘S wonderful
アップテンポのスウィングナンバー。硬い音で速弾きされるベースやギターとソフトなヘレンの歌声が対照的です。

You’d be so nice to come home to
ヘレンの代表曲です。中盤のトランペットソロからのピアノソロはちょっと長すぎますが演奏を聴きたい人ならじっくりと聞けて満足できるしそうでない人は演奏が終わった後のボーカルでやっと戻ってきたと嬉しくなる。いいアレンジだと思います。

What’s new
ヘレンの神秘的でどこか悲しげなボーカルがとても美しいバラードナンバー。クリフォードのトランペットも音色は明るいもののどこか影を感じます。

Falling in love with love
クールジャズタッチのミディアムナンバー。クールなピアノがかっこいいです。恋に恋するという不思議なタイトルは恋に憧れて本当は好きでもない人のことを好きだと思ってしまうという意味の言い回しらしいです。

Yesterdays
恋の思い出を歌った曲ですがヘレンのこのバージョンが一番切なさを感じます。マイルスの繊細なトランペットの音を卵の殻の上を歩くようなんて表現がありますがヘレンの歌も卵の殻の上を歩けそうです。

Born to be blue
ブルーに生まれて。歌詞もかなり悲しいですがヘレンのボーカルは自分のことを話しているかのようです。正直いうと悲しい時に聴くとつらくなっちゃいます。

Don’t explain
ビリーホリデイの曲で歌詞は浮気を咎める内容です(シャツに口紅がついてるとか結構歌詞が生々しい)個人的にはB面は悲しげな曲が続くのでこの曲が最後の方が統一感があっていいと思います。