白い庭園
叔母が言った。綺麗な子だから、と。
男はそんなに乗り気ではなかったが、島根まで車を走らせた。
足立美術館の看板が見えた時、雪が降り始めた。
時計に目をやる。正午過ぎ。
五時間か、それだけの時間があれば何ができただろう、と男は考える。
入口の前に叔母と若い女性が立っている。
「ごめんねえ、遠くまで来てもらって、この子が優子ちゃんよ」
優子が会釈する「初めまして、今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ」男は顔を見て、目を逸らす。
「じゃあ後は若い者同士で、ってこれ言って見たかったの」叔母が笑う。
入口を抜ける二人。どちらも口を開かない
「喋るのは苦手ですか?」優子が声をかける。
「すいません」
「ふふ、謝らなくていいですよ」
ガラス越しに真っ白な庭園が広がっている。男は息を呑む。
「……綺麗」優子がつぶやく。
男は優子の横顔を見る。初めて、しっかりと顔を。
そしてこう思う。
叔母が言った通りだ、と。