007 飛べない鳥 The bird which can't fly 【 BLACK BIRD DIRTY SCRAP UNDERGROUND 002 】
【 BLACK BIRD DIRTY SCRAP UNDERGROUND 002 】
黒い鳥のように、どうしても白鳥にはなれない、
今まで、出会ってきた、そんな人たちとの、心象風景を、
写真と、散文形式で、書き記しておこうと思って
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007 飛べない鳥 The bird which can't fly
昔、探偵なんてものを生業としていた季節があって
同僚に、カイという男がいた
" 飛べない鳥なんていないさ
すべての鳥は、飛ぶために生まれてきた
きっと、飛べる
鳥は、きっと、飛べる”
これが、カイの口癖だった
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そんな、カイの口癖に
んなこといったって、ニワトリみたいに
どうしても飛べない鳥だっているじゃん
とか思いながらも
どんな世界にいても、落ちこぼれで
怒られているばかりの僕には
その言葉は、うれしく感じられた
はじめた頃は、こりゃ、天職だとか思っていた探偵の世界も
しだいに、その底に流れる、悲しい水に、耐え切れなくなり
僕は、いつしか、その世界も去り
なにもないものになった
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去ってゆく僕のことを、多くのひとが罵るなか
カイだけは、少し、まぶしそうな顔をして
そうか、飛び立つのか、おまえ
と、静かに微笑んでいた
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月日はたち
気がつけば、写真家なんていう
これまた、カタギなんだか、よくわからない
自由なものになったころ
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いつものように、二日酔いで、テレビを見ていたら
ニュースに、見知った顔があった
カイだった
逮捕されたみたいだった
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昔の仲間に話を聞いてみると
詐欺まがいの案件に、手を貸したみたいだった
探偵の世界ではめずらしい話ではなかったので
あーあ、闇から抜けれなかったねえ、と、思ってた
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それから
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主犯格ではないので
すぐ出てきたみたいだけれど
なんかもう、すっかり腐ってしまっているみたいで
酒びたりで、ひどく生活が荒れていて、手に負えない
昔の仲間の、お前の話なら聞くかもしれない
一度、会いにきてくれないか
と、毎日、関係者から、電話がかかってくる
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正直、かかわりたくないな
と、思って
会いには、いかないでいた
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知らない
べつに、知らない
-
知らない
べつに、俺には、関係ない
-
そんな、日々を過ごすうちに
昼に
夜に
カイの、あのときの、まぶしそうな顔が
頭に、浮かぶようになった
いつしか、それに、耐えられなくなった僕は、
チっ
とか、いいながら
車のキーをとり
カイのもとへ
" 飛べない鳥なんていないさ
鳥は、きっと、飛べる”
そう、伝えるために
MIZUHO 20211005
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