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わたしの最後の恋#3


わたしは彼のことを

『パンダ』と呼ぶことにした


パンダはオーダーをとると奥に
帰っていった


はじめて話したドキドキもあったが
思ったよりも冷静な自分がいた


なぜ冷静なのか?



そもそもわたしはその時
付き合っている恋人がいた


だから私にとってこのお店の
かっこいい彼は『パンダ』でしかない
恋愛対象として見る気もなかったし
ただただ目の保養だった



そんな気持ちもあってか
実際にはじめて話せたのに
こんなもんか。
というなんとも寂しい感想だった
だって話せたからといって
その先がないのだから。


しばらくするとパンダが
ホットジンジャーエールを
持ってきてくれた

『熱いのでお気をつけください』


それとともに私に向けられた
屈託のない笑顔と心の奥まで
見透かされてるんじゃないかと
思ってしまうような澄んだ瞳


ちょっと、ドキッとした。


いやいや。

パンダは仕事でやっているだけ
みんながこのサービスを受けている


この世の中には自分が思っていないうちに
愛想を振りまいてファンを作ってしまう
人間が一定数いるのは事実

彼らには全く悪気がない

むしろ良かれと思ってそうしているし
そうされた側が勝手に勘違いする方が悪い
そう、彼等は何も悪いことはしていない


彼もきっと俗に言う

『あざとい』

人なのだろう



騙されるところだった。危ない危ない。

『パンダ』が愛想をふりまけないほうが
そもそもおかしい


何よりも
忘れてはいけない


私には恋人がいるのだから。




ほっと一息ついた。
とともにやることがある

溜め込んだ仕事が山ほどあるのだ

ひとつひとつ仕事をこなしていった


でも頭は上の空だった

いや上の空じゃない


『パンダ』のことで
頭がいっぱいだった



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